The Origins of Totalitarianism の感想

本書の内容に関しては、既に多くの書評がありますので、ちょっと難しい本書を読むに当たって、参考になりそうな点をいくつか。

・social researchという雑誌のvolume 69, No.2 (Summer 2002)が本書を特集しています。中でも、Roy T. TsaoのThe Three Phases of Arendt’s Theory of Totalitarianismは、本書を1回読んだ後で読むと、2回目に向けて、頭の整理がつきます。この特集は[]に掲載されています。
・本書の出版の経緯は、全体の構成を把握するのに役立ちます。前掲のTsaoの論文に詳しいですが、本ハードカバーの場合、Samantha Powerのintroductionでも簡単に触れられています。
・みすず書房から邦訳が出ていますが、これは本書のドイツ語版を邦訳したものに、適宜英語版の邦訳を足すという変則的な内容になっています。本書のドイツ語版は英語版よりあとにアーレントが書いたもので（翻訳ではない）、当時アーレントはまだ英語力が十分ではなかったこともあって、英語版より記述が詳しい箇所が多々あります。英語版の記述のみではちょっと理解困難な箇所も多いので、邦訳の巧拙は別にして、部分的には、大変参考になります。
・本ハードカバーは版組が新しいので、前掲の論文などの引用とはページ番号が合いません。そういう意味では1973年のペーパーバック版の方がいいかもしれません。