がんと闘った科学者の記録 (文春文庫) の感想

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参照データ

タイトルがんと闘った科学者の記録 (文春文庫)
発売日2011-06-10
製作者戸塚 洋二
販売元文藝春秋
JANコード9784167801359
カテゴリジャンル別 » ノンフィクション » 科学 » 闘病記

購入者の感想

 ノーベル物理学賞受賞者、小柴昌俊氏の弟子で次期ノーベル賞に最も近いと言われた著者が、志半ばでがんを患い、生涯を終えるぎりぎりまで、科学者の目で自らの病状を客観的に見つめつつ、絶望的な現実を前になおポジティブな精神を持ち続けた姿勢に感動しました。
刻々と悪化の一途を辿る自らの病状、投与される抗がん剤の効果を示すグラフ、散歩の途中で目にする草木や庭の花々について写真に収めながら、徹底的に分析するところなどいかにも科学者らしい一面は同時に、迫りくる死の恐ろしさから目をそらし、気を紛らせるための努力であることが読み進むほどに明らかになります。
著者は 「自分の命が消滅した後でも世界は何事もなく進んでいく」  「自分が存在したことは、この時間とともに進む世界で何の痕跡も残さずに消えていく」  「自分が消滅した後の世界を垣間見ることは絶対にできない」 ということに気づき慄然とします。 そして人生が終わるという恐ろしさを考えないように気を紛らわして死までの時間を過ごさなければならないと考えます。 
死の恐れを克服するための手段の一つが徹底的なデータ分析の作業でした。 腫瘍の大きさと抗がん剤との関係、その投与時期のタイミング等のち密なデータ分析は、彼の東大時代からの友人で元国立がんセンター長の垣添忠生氏に「おそらく世界に例がない」とまで言わせています。

また著者は「一日一日を充実してお過ごしください」と言われるのが一番困るとも書き、正岡子規の次のような言葉を紹介しています。
「死を前にした正岡子規がこんなことを言っているんですよ。『悟りということは如何なる場合にも平気で死ぬる事かと思って居たのは間違ひで、悟りという事は如何なる場合にも平気で生きていることであった』」

近い死を宣告された時に精神のバランスをどう保つかという課題は昨今の私の最も関心のあるところです。  立花隆の序文と、著者との対談、垣添氏の解説も読みごたえがありました。

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