葭の渚 〔石牟礼道子自伝〕 の感想

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参照データ

タイトル葭の渚 〔石牟礼道子自伝〕
発売日販売日未定
製作者石牟礼 道子
販売元藤原書店
JANコード9784894349407
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学

購入者の感想

『新装版 苦海浄土 (講談社文庫)』で知られる著者の自伝。といっても、生い立ちから同書刊行前後、だいたい40歳過ぎあたりまでなので、実質的には「半生記」というところだろう。

祖父母や父母のこと、家の近所にあった商家、女郎屋などのこと、そういったものとの触れあいの中で著者自身が世界を広げていく。また、代用教員となってからは、戦災孤児を家に連れてきて半年ほど面倒を見たり、結婚後には作歌に夢中になり、独特の感性を持った歌人・志賀狂太と手紙を交わしたり、やがて高群逸枝伝執筆の準備に、単身で東京へ出て、長期滞在をしている。やがて、子どもを連れていった病院で奇病(水俣病)に苦しむ人を見かけ、文学仲間からも奇病の存在を知らされ、その原因などに疑問を持ち、話を聞き始めていく。
こういったことを体験しながら、著者の中には「近代」に対する疑問が出てくる。精神に変調をきたした祖母を大切にした父や母の姿、子どものころから親しんできた人々の繋がりや日々の暮らし、そういったものを無用のものとして、壊していく者たちへの静かな怒りがその背景にあるのだろう。

30年ほど前に最初に『苦海浄土』を読んだときに感じたのは、人々の日常を奪っていった水俣病への憤りと、これほどの作品を書く人は、いったいどのような文学的な背景を持っているのだろうかという素朴な疑問だった。ただ、文庫の解説などを読んでも、詩を書いていたことを除くと著者と文学との関わりははっきりとは見えてこなかったと記憶している。そういった意味で、本書を読み、ようやく著者の「文学」がどういった足場の上に築かれてきたのか理解できた。

最も強く印象に残り、共感できたのは、著者が代用教員や化粧品や靴下を売ったりしながら、「自分が今の世の中に合わない」と感じていることである。これは単に仕事がうまくできないから感じたことではなく、著者自身の“根”の部分にある“叫び”に違いない。

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