もっと知りたい長谷川等伯―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション) の感想

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参照データ

タイトルもっと知りたい長谷川等伯―生涯と作品 (アート・ビギナーズ・コレクション)
発売日販売日未定
製作者黒田 泰三
販売元東京美術
JANコード9784808708238
カテゴリジャンル別 » アート・建築・デザイン » 絵画 » 東洋・日本画

購入者の感想

長谷川等伯の作品を京都の寺院に特別公開された折に、複数見る機会があり、等伯の全体像を把握する目的で本書を購入。「もっと知りたい」シリーズは、以前藤田嗣治のものを入手して大変明快であったため選んだが、本書も期待を裏切らない出来。本書は、画家の生涯と作品を5期にわけて紹介。解説は簡潔で平易なので数時間あれば通読可能。本書はすべてカラーページで掲載されておる、絵も比較的大きいので、ある程度鑑賞の目的にもなる。たとえば東京博物館の瀟湘八景図p40などの横長の屏風などは上下に掲載し、なるべく大きく、しかも白紙の部分が最小限になるように工夫してあり、絵を見ているだけで描かれた地形をみているかのような感覚にしてくれる。等伯作品を収蔵する京都の寺院の地図p5は優れているが、本書にも書かれているように「等伯作品を収蔵するこれらの寺院は一般公開されていないところが多い。特別公開の情報などを確認されてからお出かけいただきたい」というのが現状である。例えば、建仁寺両足院の「竹林七賢図屏風」は2019年京の冬の旅非公開文化財特別公開で見られたが、これは5年ぶりの公開。圓徳院では「山水図(襖」p17」が収蔵されていることになっているが、実際、圓徳院を訪れてガラス張りのケースの「山水画」の説明文を注意深く読むと常設されているものは細密複製画であることがわかり失望させられる。金地院の「老松図p45」は実際に金地院に行くと常設ではあるのだが入場料の他に特別拝観料を払わないと見ることができない。なお本書では「老松図」として襖絵の松の部分のみを掲載しているが金地院では題名を「猿猴捉月図(えんこうそくげつず)」として手長猿の部分を入場券やポスターで宣伝している(ちなみに本書では同様の手長猿の絵は相国寺のものを紹介し、牧谿の観音猿鶴図と比較しているp18)。常設で見られる智積院の宝物館の障壁画には本書では8ページが割かれているが、智積院には他にも特別公開の時される「十六羅漢図屏風」も所蔵している。各寺院でどの作品が常設で見られるかについての詳しい情報が改訂版には望まれる。また本書には京都以外の等伯の作品も収録されているが、そうした作品が全国のどこにあり、常設されているか否かの情報なども欲しとこと。たとえば本書で8ページにわたって紹介されている東京国立博物館の「松林図p30」は常設ではない。

長谷川等伯(1539-1610)の作品の魅力を、その生涯をたどりながら解説した本。薄いが、オールカラーで、作品の写真が多く掲載されており、印刷も良好。

この時代としては異例の、80点以上の作品が遺されているという。また、実態が不明の40歳代を除くと、その生涯にわたって作品が網羅されている。春信と名乗った能登時代。京都へ上ってからの大抜擢。中央画壇の絵師としての名声の確立と等伯への名称変更。狩野永徳の影響と狩野派へのライバル心。千利休との関係。秀吉への仕事。息子の久蔵の手腕とその早すぎる死。自雪舟五代を名乗っての、秀吉死後の新たなパトロン探し。法橋に叙せられた晩年。

それにしても、等伯作品の多彩さには眼を見張るものがある。「松林図」「智積院障壁画」をはじめとする主要作品の解説を通して、着色や筆遣い、特に眼の描写に特徴がある動物画、などの特徴について詳しく解説が行われている。長谷川等伯の凄さ、中世の日本の絵画の発展に寄与した足跡の大きさについて、リアルに感じられる一冊になっている。

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