イスラム国の野望 (幻冬舎新書) の感想

　著者の高橋和夫氏は、中東およびイスラム圏におけるニュースの解説者として多くのメディアに登場しています。一方、本務校である放送大学では「現代の国際政治 (放送大学教材)」（テレビ）、「国際理解のために (放送大学教材)」（ラジオ）などで、アメリカにおけるイスラム教徒や尖閣諸島中国漁船衝突映像流出事件の当事者である「sengoku38」氏（同氏も放送大学卒業生）も登場してのメディアと政治の問題、あるいはゾロアスター教など、見落とされがちな視点での講義が印象的です。
　高橋氏には、中東問題の優れた入門書として知られる『アラブとイスラエル パレスチナ問題の構図 (講談社現代新書)』 (講談社現代新書)がありますが、本書も「大事なポイントだけを絞りに絞って、最大限にシンプルな解説」（５頁）により、「です・ます調」を使いできる限り平易に「イスラム国」の内実を伝えています。
　第1章では、「イスラム国」成立の直接的なきっかけといえるイラク戦争、そしてその後の、イラク国内のアメリカの占領政策（この占領下で重要な役割を果たしたぺトレイアス陸軍大将の動きは興味深い）の「成功」と、イラク・マリキ首相の政策的失敗について触れています。