月と六ペンス (角川文庫) の感想

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参照データ

タイトル月と六ペンス (角川文庫)
発売日販売日未定
製作者サマセット・モーム
販売元角川グループパブリッシング
JANコード9784042973027
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 文芸作品 » 英米文学

購入者の感想

今まで読んだ小説の中で、最も面白かったものの一つ。
登場人物とゴーギャンとを重ね合わせる必要はない。
もし重ね合わせるのなら、ファンタジーの入り込む余地のある程度にいい加減にしておくくらいの遊びがなければ、史実との違いにとらわれて楽しめないだろう。

好きか嫌いかは読んだ後に、読者自身が決めればよい。
私に言えるのは、他人に薦めるに足る小説だということだけだ。
是非手にとって見て欲しい。

優れた物語作家には、いわゆる世間一般で代表作とみなされている作品と、通が選ぶもう一つの代表作,というものが結構あると思います。 例えばドストエフスキーなら”罪と罰”と”カラマーゾフの兄弟”、司馬遼太郎なら“龍馬がゆく”と”坂の上の雲”、黒澤明なら”七人の侍”と”生きる”という風に。 モームの場合、”月と六ペンス”は明らかに前者に属するもの(後者は”人間の絆”でしょう)だと私は思います。 無論、この際どちらの方が作品として上級かーなどどいう議論は野暮というもので、受け手は少し趣の違った二つの傑作を素直に楽しんでいればいいのではないでしょうか。

それにしても、独断かもしれませんが、この小説は20世紀に大量消費されることになるエンターテイメント小説のはしりーとも言える作品ではないでしょうか。  もちろん娯楽小説(伝奇もの、怪奇もの、探偵もの)というものはそれ以前からあったわけですが、そういう特殊な、リアル感をあまり求められない空想物語ではなく、かといって19世紀の偉大な文学作品のように、作者の思想や全人格をぶつけてくるようものでもなく、適度に重く、スリリングかつ、大衆にも知識人にも楽しめる小説のプロが生み出す物語ーという意味において、やはりこれはそういう小説の原型ではないかという気がするのです。  ストリックランドという芸術に取り付かれた男の破天荒な生き方、クライマックスの異常な緊張感、そして彼にマゾヒスティックなまでにいたぶられる画家や、その妻の行動ー。 どれをとっても面白く、しかもこういった登場人物たちに別に作者は感情移入をしているわけでもない冷徹さまでも明らかに見て取れます。 やはり、いわゆる”偉大な文学作品”のように、思想と作家自身が一体化した創作ではなく、プロの物語作家が、消費を前提として書いたエンターテイメントーそれもその最上のものーという気がするのです。 若い人でまだ未読の方には是非お勧めします。

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