酒場詩人の流儀 (中公新書) の感想
参照データ
タイトル | 酒場詩人の流儀 (中公新書) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 吉田 類 |
販売元 | 中央公論新社 |
JANコード | 9784121022905 |
カテゴリ | 本 » ジャンル別 » 文学・評論 » エッセー・随筆 |
購入者の感想
新聞に連載された吉田類のエッセイ集。ひとつひとつは二、三ページの量で小気味いい。
深夜ひとりで酒を飲みながら味わうのもよし、私は下戸だから散歩のときに持参して
ベンチの木漏れ日の下で読む。ふうっと息を整えながら少しずつ惜しむように読んでいく。
例えば、「旅人の視点」の出だしはこう。
缶ビールの栓を開ければ、車窓の風景が流れ始める。やがて視界が広がっていき、
遠景は山々を配するようになる。じっと眺めていると、山腹のところどころが
紅葉色をまとっていることに気付く。もう一方の車窓ガラスには、旅人の顔をした
自分の姿が映っているかもしれない。・・・
これだけの短い文章のなかに、酒、旅、季節、風景、自画像があざやかに収められて
まさに俳句的な映像美を感じる。
吉田類といえば、はしご酒をして飲んだくれているイメージ、あるいは全国をTVや
講演会でまわり土地土地のおいしい酒、おいしい料理を味わい尽くしているという
イメージだが、この本を読むと結構ストイックであることがわかる。オフの時は各地の
奥山歩きでからだを鍛えている。酒仙をめざしているのかもしれないが、
酔漢に襲われてもびくともしないあのこわもての、黒ずくめの衣装に包んだマッチョな
からだはかなりの鍛錬のたまものらしい。
当書は極めて硬派のエッセイであり、3.11後の俳人のこころのうつろい、
ひととのふれあい、猫に対する深い愛情、蝶の写真家やイラストレータ、歌手?としての
側面など私の知らなかった吉田類のすがたが数多く垣間見られる。
なかに収められている30あまりの俳句の中で私がとくに好きな句は
馴初めも 神の采配 白菖蒲
火酒過ぎて 亡者の船に 揺られたる
深夜ひとりで酒を飲みながら味わうのもよし、私は下戸だから散歩のときに持参して
ベンチの木漏れ日の下で読む。ふうっと息を整えながら少しずつ惜しむように読んでいく。
例えば、「旅人の視点」の出だしはこう。
缶ビールの栓を開ければ、車窓の風景が流れ始める。やがて視界が広がっていき、
遠景は山々を配するようになる。じっと眺めていると、山腹のところどころが
紅葉色をまとっていることに気付く。もう一方の車窓ガラスには、旅人の顔をした
自分の姿が映っているかもしれない。・・・
これだけの短い文章のなかに、酒、旅、季節、風景、自画像があざやかに収められて
まさに俳句的な映像美を感じる。
吉田類といえば、はしご酒をして飲んだくれているイメージ、あるいは全国をTVや
講演会でまわり土地土地のおいしい酒、おいしい料理を味わい尽くしているという
イメージだが、この本を読むと結構ストイックであることがわかる。オフの時は各地の
奥山歩きでからだを鍛えている。酒仙をめざしているのかもしれないが、
酔漢に襲われてもびくともしないあのこわもての、黒ずくめの衣装に包んだマッチョな
からだはかなりの鍛錬のたまものらしい。
当書は極めて硬派のエッセイであり、3.11後の俳人のこころのうつろい、
ひととのふれあい、猫に対する深い愛情、蝶の写真家やイラストレータ、歌手?としての
側面など私の知らなかった吉田類のすがたが数多く垣間見られる。
なかに収められている30あまりの俳句の中で私がとくに好きな句は
馴初めも 神の采配 白菖蒲
火酒過ぎて 亡者の船に 揺られたる