デヴィータがんの分子生物学 の感想

がんの教科書を書くのは本当に難しいと思います。余程の目利きが書いた教科書でないと、混乱と齟齬でわけがわからない。ポストゲノムの時代になり統合的・包括的なゲノム情報が洪水のように出てくるようになり、癌の遺伝学・分子生物学は全く新しくなりました。そのような膨大でいまだ整理の付かない新しい情報を元に組み立てられた初めての教科書が本書だと思います。困難な仕事だったと思います。でも素晴らしい、これまでの教科書とはひと味もふた味も違う書物ができあがりました。

この10年のまとめともいえる第一章は本当に凄いの一言です。感動的な導入です。よくここまで新しい情報を盛り込んだものだと思います。なおかつ非常にわかりやすい文章です。その後の内容は章によって出来不出来はあるのですが、概して読んでいて楽しい教科書だと思います。

第一章を読むだけでも購入の価値はあると思うーそんな型破りの書評をしてみたいと思うくらいでした。