官邸崩壊 (幻冬舎文庫) の感想

アメリカ大統領：4年（2期まで）
イギリス首相：原則として5年（下院任期5年・解散あり）
ドイツ首相：原則として4年（下院任期4年・解散あり）
フランス大統領：任期7年
中華人民共和国主席：任期は5年（連続3選は禁止）
韓国大統領：任期は5年（1期まで）

そして・・・

日本国首相：原則として4年（下院任期4年・解散あり）

―のハズだが、
戦後4年以上勤められたのは、吉田茂、池田勇人、佐藤栄作、中曽根康弘、小泉純一郎の5人だけ。
特に平成に入ってから平均が約2年になり、小泉政権以降の5年間で6人も首相が変わっている。
つまり、海外の首脳からすればサミットや首脳会議をする度に日本の首相が変わっており、
今年話しても来年は別の人物が就任する。

1年前「どうも大統領、日本国首相のAです」
今年「どうも大統領、日本国首相のBです」
1年後「どうも大統領、日本国首相のCです」
さらに1年後「どうも大統領、日本国首相のDです」

・・・海外の首脳から見れば「一体、誰と話をつければいいんだ？」と思うだろう。
それだけでない。約束しても来年は別の人間が首相になるため、政策が引継がれない。
政策の継続性がないため、国際社会で日本が指導力を発揮することは完全に不可能。
蚊帳の外に置かれてしまう。

国内に向ければ「政治主導！」「官邸主導！」と政治家が叫ぶも、閣僚（大臣）は毎年「内閣改造」という名のもとに代わり、
また各省庁の管轄する政策に無知な人物が大臣に就任するという信じられないことが起きている。
新大臣は官僚が作った政策に対する判断力がないので、自分で考えず官僚に依存。
そして彼らのいう通りに動く。もし官僚の意見と対立することになれば、情報が大臣の耳に一切入らず大臣は孤立する。
そして議会で追求されればアタフタ。これが全国のニュースで映れば無能のレッテルを付けられて野党から辞職を迫られ、与党からも見放され挙句の果てに大臣職を辞任ということになる。

人脈（お友達の好き嫌い）ってあまり変わらないんですね(笑)政治の世界では。

今読むと（2013年2月）非常に興味深いですね。安倍政権を今では安倍第一次内閣と呼ぶ。そして、現在が安倍第二次内閣。特に興味深いのは政権を支える周りの人々、大臣やら首相官邸を取り巻く人々。第二次内閣でも多くの安倍ファミリー的な人々が登用されている。
その点は上杉氏の当時の視点が素晴らしいのだろう。しかし、どこまでがご自身での見聞なのか、どこが推測や伝聞なのかがよくわからない。特に政治家個人の評価が果たしてどの程度まで信頼性をもつかは読者に任されているのかもしれませんね。

備忘録メモ
安倍正規軍の「参謀総長」には菅義偉
有識者メンバー　伊藤哲夫、中西輝政、西岡力、島田洋一、八木秀次　戦後レジームからの脱却
その援軍　下村、世耕、高市、安倍親衛隊）根本匠、石原伸晃、塩崎恭久　（NAISの会、Aが安倍）　中川昭一（真の同志）中川秀直　清和4兄弟：安倍晋太郎という父、長男の森、次男の小泉、三男の中川、四男　晋三
相談相手は麻生
経済界　御手洗富士夫、牛尾治朗、葛西敬之（JR東海会長）、張富士夫、秋山喜久、的場順三（のちに官房副長官、サプライズ人事　通常は官僚出身者、それが霞が関から反発）
創価学会　祖父と戸田城聖（第2代会長）との交流、父と池田との交流、安倍自身も池田の次男と高校の同級生
特命チーム（首相直属スタッフ10人）公募、役所の選別を受けないのは高橋洋一氏ひとりだけ。
女性　山谷えり子参議院議員（元産経新聞記者）、小池百合子補佐官
2006年10月　戦争責任発言、従軍慰安婦問題については、河野官房長長官談話を受け継ぐ。　戦略的互恵関係としての中国　櫻井よし子、中西らは批判

不祥事：タウンミーティングのやらせ質問と謝礼（電通、電通と朝日広告社）
迷走する教育改革、公務員改革（塩崎、渡辺（現みんなの党）にたいする官僚側の猛反発
破綻する側近政治　秘書官の迷走
道路特定財源見直し（塩崎）の自民党内での反発
4人の閣僚交代
2007年参院選惨敗