鉄から読む日本の歴史 (講談社学術文庫) の感想

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タイトル鉄から読む日本の歴史 (講談社学術文庫)
発売日販売日未定
製作者窪田 蔵郎
販売元講談社
JANコード9784061595880
カテゴリ歴史・地理 » 日本史 » 一般 » 日本史一般

購入者の感想

武力を制する者が権力を握ってきた歴史を考えると、まず、鉄の生産体制を手中にしておくことは不可欠だった筈だ。だが、古代、中世、近世と、その生産体制については殆ど一般の人は知らない。鉄が無ければ家康も秀吉も謙信も戦が上手いといっても絵空事だった筈だ。なぜこんな基本的なことを何も語らずに、日本では「歴史」が語られ、「歴史好き」と称する(私もそれ)人が居るのか不思議だ。本書はそのテーマに当たった数少ない一般向けの本。1966年に出版、文庫化は2003年だが、2007年までに10刷りであることから、いかに関心の的になっていたかがわかる。内容は、労作であることは明らかで、入手しにくい事実を丹念に積み上げていったことは良く分かるのだが、やはり、著者は現場の人のせいか、知識を一般向けに開陳する手立てが不慣れだったのだと思う。普通この手の話を一般向けに語るなら、1)鉄とはどのように鉄鉱石などの原料から作られるのか? 2)各時代毎の生産技術 3)各時代の生産体制と生産力4)為政者たちと鉄の関係。著名な武士はどのように生産体制を維持したか?などが語られるべきだと思うが、本書では残念ながら部分的に垣間見られるのがやっとという程度の記述に終始している。戦国時代の生産体制と生産力がわかれば、それだけで、各武将の武器の所有量が想定され、そういう面からも案外に政治的な疑問が氷解することも多々あろうと思うのだが。それと太古における鉄との出会いを、非常に偶然的なもの、鉱脈で焚き火をした云々の俗説を受け入れているが、これは支持し難い。鉄は銅とは異なり融点が高く、含有酸素を追い出すための炭素との結着、またその炭素が良くも悪くも鉄と結着し易い点(鋼の生産)など、デリケートなところが多いと思われ、到底、焚き火を偶然したら・・・などという話ではないと思う。青銅器時代の薀蓄のみの延長線上にあると考え辛いところもあり、なかなか興味深い論点だと思うのだが、本書では触れられなかった。前半は時系列的に鉄に関する事実をやや断片的に羅列していくが、後半、ふいごの構造の歴史的な変遷を若干示す論述に入るが、如上の論点に就いて十分ではなかった。

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