AKB商法とは何だったのか の感想

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著者の前作『僕たちのゲーム史』（星海社新書）がとにかく素晴らしかったので、本書も発売後にすぐに購入。AKBに対する関心は人並み程度だと思うが、ただそれをとりまく世の膨大な言説には興味津々の読者として、本書もわりと面白く読めた。「AKB商法」の何が新しく何が別に新しくないのか、なぜ今の世の中ではそれがしばしば批判されてしまうのか、といった点について、時代ごとのCD売上チャート（ランキング）の変遷とトップアイドルをとりまく様々な言説を主な資料としながら、アイドルの歴史を遡り、「商法」に関する系譜学的な考察を展開していく。その筆致は冷静でかつ洞察に満ちており、無知や無関心からの浅はかな非難とも、愛があふれすぎるがゆえの部外者にはついていけない絶賛とも異なり、とても説得的だと思った。
「商法」のバッシングを回避するためには「DD（誰でも大好き）」の文化を普及させていくことが大事なのだ！という「倫理的」な主張には、アイドル文化にしっかり（体を張って）コミットしていない者には正直あまり実感がわかなかったが、しかしその主張がAKB現象やそれに代表されるアイドル文化の空前の隆盛という「今」を見据えてなされている考え抜かれた提言であるのだろう、という感じは十分に伝わってきた。AKBを通してアイドルを、日本文化の現在を、じっくりと考え、語りあっていくのにこれは大いに参考になる作品であると感じた次第である。