原発敗戦 危機のリーダーシップとは (文春新書) の感想

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タイトル原発敗戦 危機のリーダーシップとは (文春新書)
発売日販売日未定
製作者船橋 洋一
販売元文藝春秋
JANコード9784166609567
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

 震災当時の福島第二原発の所長であった増田氏との対談が収録されており、「大事にする前に事態収拾した」貴重な経験を証言してくれます。
 福島第二原発は
1中央制御室の電源が地震と津波に耐えた
2同型の原子炉に統一されていた為、修理工程や発注するスペアパーツが共通していた
3所長に土地勘や現地の下請けとの人脈があった
という3つの大きな幸運に加え
A一つのゲートを除く全ゲートを封鎖し、勝手な出入りと持ち場放棄を厳禁したこと
B本社上層部の干渉を最小限に抑える反面、現場指揮官の進言を尊重したこと
C中央制御室に通常運転時の4倍の80人を集結・雑魚寝させ、即応予備要員を確保したこと
との所長の決断が両立して漸く惨事を免れたことが当事者の証言で明示されています。
 大規模施設に災害が起こった際に大事を免れる為の要点、責任者の対応の好例が提示されており、原発維持の賛否を抜きにしても読む価値の高い本であると思います。

本書は、東京電力福島第一原子力発電所事故に対する政府・行政・東電の対応を検証し、太平洋戦争における日本政府・日本軍の失敗と重なるものがあると指摘している。

検証・分析とも概ね的確だが、船橋洋一が事故から3年も経って本に纏める内容としては不十分。
日本人が太平洋戦争の敗北をキチンと戦後の政治や生き方に反映していないことは過去に多くの識者が指摘しており、本作の考察はその焼き直しに過ぎない。まぁ、同じ日本人論なので、大失敗の要因を分析すれば、同じような考察となるのも致し方ないのだが。

神国日本を疑わず日の丸を振り回していた日本人が、8.15を境に「私は前からオカシイと思っていました」と自らを省みることなかったことが、この問題の本質であるが、原発安全神話を否定しているようで実は180度転向しただけで科学的な検証や自省をしていないのでは?と当事者以外の日本人自身(本書の読者と言い換えてもいい)に返す刀を向けない限り、本論は完結しない。
これは、ナチスを選んだのは自分達自身という自覚の下にドイツ人が戦後進めたことと、全てはファシズム政権と軍部が悪かった庶民は悪くなかったという米国の甘い洗脳に溺れた日本人の違いと同じ話。
ハッキリ言えば、船橋洋一は、己の出身母体をはじめとするマスコミ・ジャーナリズムの原発に関するスタンスを検証したのかよ?という話。総括や検証をしていない点では、政府も電力会社もマスコミも五十歩百歩だって自覚がない点ではマスコミやジャーナリストの方が始末が悪いとも思う。つまり、ダワーの名著「敗北を抱きしめて」の優れた点である、全方位の検証こそが、事故後3年が過ぎた現在において著者のような実力のある者が為すべきことだろう。

この点で、本書後半の識者との対談録は、新たな見識や観点との出会いを多く含有しながら、著者は持論の傍証にとどめているのも残念至極。
月並みな御上批判にはこれだけの舌鋒鋭く元気のよい著者なら、その一部でも、福島県(さすがに県民とは云わないが)や脱原発論者に「転向」した菅元総理に直撃させるくらいのことはして欲しかった。0

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