人生論 (角川文庫) の感想
参照データ
タイトル | 人生論 (角川文庫) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | トルストイ |
販売元 | 角川書店 |
JANコード | 9784042089261 |
カテゴリ | 文学・評論 » エッセー・随筆 » 外国のエッセー・随筆 » ロシア |
購入者の感想
トルストイは文豪としてしか知らず、彼の著書にこのような私的な人生論があるとは知らなかった。読むと意外に内容は単純である。文豪こそ複雑な人生論を持つかと思いきや、そうではない。しかし、この単純さの中にこそ、真実力強い人生観が潜んでいるように思える。
「訳者あとがき」は、至極簡潔に当該著書を解説している。訳者あとがきから、以下引用する。
掲題の結論について、「そこに説かれている思想は、せんじつめれば、愛の一語につきる。つまり、人間は、肉体と肉体にやどる動物的な意識を理性に従属させること、いいかえれば、自我を否定して愛に生きることによって、同胞あいはむ生存競争の悲劇から救われるばかりか、死の恐怖からも救われる、なぜなら、そのとき、個人の生命は全体の生命のうちにとけこんで、永遠の生命をうけるからである。キリストの説いた隣人愛の教えがトルストイの思想の根底にすえられているのだが、しかし、かれの人生観はどこまでも現世的で、理性によってすべてをわりきろうとしているから、キリスト教の神の観念のかわりに、人間の集団意識、人類の意識といったようなものを正面におしだして、それに究極の救いを見いだそうとしているわけである。」
他方、トルストイがこうした人生論に取り組む私的な事情についても、興味ある指摘が訳者あとがきに続く。「しかし、こうしてこの「人生論」を読むと、自分の思想を世にひろめようというトルストイの意図よりも、むしろ、自分で自分を説得しようという試み、つまり、自分の納得できない人生の不条理になんとか合理的な説明をくわえて、安心立命の境地にたっしようというかれの努力のほうが、いっそう、強く感じられるようだ。」
さて、トルストイの人生論と、ヒルティの「幸福論」は比べようのないものとは思うが、敢えて言うならば、トルストイが人生の理論編を扱うなら、ヒルティは人生の実践編を扱うように見受ける。両者ともに、キリスト教の思想を土台として、その人生論が成立している。
「訳者あとがき」は、至極簡潔に当該著書を解説している。訳者あとがきから、以下引用する。
掲題の結論について、「そこに説かれている思想は、せんじつめれば、愛の一語につきる。つまり、人間は、肉体と肉体にやどる動物的な意識を理性に従属させること、いいかえれば、自我を否定して愛に生きることによって、同胞あいはむ生存競争の悲劇から救われるばかりか、死の恐怖からも救われる、なぜなら、そのとき、個人の生命は全体の生命のうちにとけこんで、永遠の生命をうけるからである。キリストの説いた隣人愛の教えがトルストイの思想の根底にすえられているのだが、しかし、かれの人生観はどこまでも現世的で、理性によってすべてをわりきろうとしているから、キリスト教の神の観念のかわりに、人間の集団意識、人類の意識といったようなものを正面におしだして、それに究極の救いを見いだそうとしているわけである。」
他方、トルストイがこうした人生論に取り組む私的な事情についても、興味ある指摘が訳者あとがきに続く。「しかし、こうしてこの「人生論」を読むと、自分の思想を世にひろめようというトルストイの意図よりも、むしろ、自分で自分を説得しようという試み、つまり、自分の納得できない人生の不条理になんとか合理的な説明をくわえて、安心立命の境地にたっしようというかれの努力のほうが、いっそう、強く感じられるようだ。」
さて、トルストイの人生論と、ヒルティの「幸福論」は比べようのないものとは思うが、敢えて言うならば、トルストイが人生の理論編を扱うなら、ヒルティは人生の実践編を扱うように見受ける。両者ともに、キリスト教の思想を土台として、その人生論が成立している。