幕末史 (新潮文庫) の感想

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タイトル幕末史 (新潮文庫)
発売日2012-10-29
製作者半藤 一利
販売元新潮社
JANコード9784101271811
カテゴリ歴史・地理 » 日本史 » 一般 » 日本史一般

購入者の感想

テレビで宮様の家庭教師をされているというのを見て、丁度この時代をおさらいしようと思って購入しました。ペリー来航から西南戦争まで、必要にして十分な内容を押さえており、この時代の空気も読めるような資料などもあって、流れるようにすっと読みやすい文章で、そういう意味では好感を持てるものでした。ただ、この時代で書くべきことをあえて書いていないことがたくさんあるようですね。冒頭に、薩長嫌いだと明記しておられるように、自身が認めたくない、あるいは伝えたくないことは書かない姿勢を貫かれているようですね。これだけ博識な方が、それらの事実を知らないとはとても思えませんので。例えば、そのころの国際情勢、特にロシアや清国、朝鮮の内情など。また、西郷さん、木戸さん、大久保さんとは書いても「山県」と呼び捨てであったり(逆に自らの感情にあまりにも従順というべきか)、西郷隆盛を革命家として毛沢東と同じ、真似しているなんて書いていますが、人間的に(その思想、行動など)全く異なるということには言及しないですし。まあ、私自身も薩長閥が支配して多くの差別があったという事実は否定しませんし、皇国史観を全面的に肯定はしませんけど、かなり本の内容は、言いたいことはわかるんだけど、世の中も歴史もそう理想通りにはいかないことを普通の人間なら納得していると思うんだけど、どうもこう左寄りに偏って書かれると、なんだかなあ、と思ってしまいますし、これを読んだ人になんらかの誤解を与えそうで心配です。というわけで、読み物としては星5つと言いたいんですけど、意図的な思想の偏りとあえて書かない姿勢は星1つだなと、中をとって星は3つということにしておきます。この本を読まれる方は、別の角度から書かれた本も読まれることをお勧めします。

画期的な幕末史講義録である。とても面白く読み、勉強になった。

美点は3つある。

一つめ。もと原稿がカルチャーセンターでの講演であるため、語りかけの口
調が大変親しみやすく、読みやすい。同じレベルのことの述べられている歴
史書はきっと他にもあるのだろうが、この読みやすさを備えているものは他
には考えられない。名講義録『昭和史』(平凡社)とは、版元が違うのだが
同じような造本にしてあるところもよい。

第二。反薩長史観という軸足の据え方がよい。ただ、ご自身が何度もお断り
を入れているように、反薩長が絶対の正義だというイデオロギー的なもので
はない。歴史というのはいろいろな見方ができるものなのだという柔らかい
視点を手放していないところが頼りになる。とは言うものの「いまも薩長史
観によって、1868年の暴力革命を誰もが立派そうに『明治維新』といっ
ています」なんて、活字で読むとちょっと嬉しく(?)なってしまいます。

第三。幕末というとペリー来航(1853)から大政奉還(1867)・江戸城無血
開城(1868)までの30年余りを語るのが一昔前までの在り方だったが、本
書は違う。明治11年(1877)の西南戦争までを一続きのものとしてとらえ、
明治という新国家が実は大変危ういスタートを切ったことを明らかにしてい
く。その難点を、大久保利通独裁の新政府は、よく乗り切ったとも評価でき
るし、実はちょっとしたイフがその後の歴史を大きく変えたはずと読むこと
もできる。

いずれにしても、大変勉強になり、ためになる読書を楽しむことができまし
た。評者の場合は、ひたすら教えられるばかりでしたが、それなりに知識の
ある方が読まれても面白い書物なのではないかと思います。また逆に本書を
最初の一歩にして幕末期明治初期の歴史散歩に出られるのも趣き深そうです。

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