無理なく走れる“気”ランニング の感想

原題はChiRunningといいます。原書では2009年の5月に改訂版が出版されています。新版の序文によると、最初の版を出版してから5年が経ち、その間にワークショップの参加者や読者からのフィードバック、また著者自身や講習会のインストラクターたちの経験から、内容を大幅に改訂または加筆したとあります。新版ではページ数で256ページから320ページに、章の数で9から12に増えています。初版と同じ写真がそのまま使われているところがありますが、それに対する説明は必ずしも同じではありません。新たな写真や図版も追加されています。

他の文献や記事ではrunning tallのような表現で直立に近い姿勢で走ることを勧めていることが多いようですが、著者が勧める走法の特徴的な点の一つは、意識的に体全体を前傾させたときに生じる前に倒れようとする力を利用して効率よく走ることを説いていることがあげられます。初版ではいかに体全体をきちんと前傾させるかという点に多くの説明が費やされていました。

改訂版では大幅に書き改められている点の一つをあげると、この前傾姿勢に対する説明です。初版では意識して積極的に体を前傾させることを強調するかのように書かれていますが、改訂版では前傾はわずかなもので、それを微調整することが大切という説明にかわっています。本書には（当然）書かれていませんが、必要以上の前傾姿勢で走り続けたために腰椎をすっかりだめにしてしまった読者がいたようです。

脚力よりも体幹の体内筋の筋力を強調している点はたしかに体幹ランニングと同じかも知れませんが、ChiRunningはそれにとどまらない多くの示唆を含んでいるような気がします。ランニング関係では本書を開いた回数がおそらく一番多いと思います。旧版のときからランニングについてアメリカでは（意外なことに村上春樹の「走ることについて語るときに僕の語ること」とともに）もっともよく売れている本の一冊です。

新版に基づいて改訳されるといいのですが、、、