子規365日 (朝日新書) の感想

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タイトル子規365日 (朝日新書)
発売日販売日未定
製作者夏井 いつき
販売元朝日新聞出版
JANコード9784022732279
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 詩歌 » 詩論

購入者の感想

子規に関する本は何冊か読んできたが、子規自身の句について読んでみたいと手に取った。
この本の元は新聞連載のようだが、昔、朝日新聞に連載されていた大岡信氏の「折々の歌」
を彷彿とさせる体で、心地よく読める。夏井氏の文が子規の句と程良い距離が取れている
からだろう。

惹かれた句を挙げてみる。

春や昔古白といへる男あり
蓁々(しんしん)たる桃の若葉や君娶(めと)る
川風の蛍吹きこむ二階哉
白百合や蛇逃げて山静かなり
蚊帳釣りて書(ふみ)読む人のともし哉
啼きながら蟻にひかるる秋の蝉
粟の穂のここを叩くなこの墓を
色里や十歩はなれて秋の風
恋にうとき身は冬枯るる許(ばか)りなり
仏壇の菓子うつくしき冬至哉

「俳句という詩形は、記憶を新鮮にパッケージングする」ものであり、「その日その場所に
いた人、交わされた会話、天気、風などが、生々しく蘇ってくる」ものだそうだが、夏井氏
の文が句と相俟って、子規の日々の生活のありようを伝えてくれる。「自分に残されている
時間におおよその見当がつき、自分のやるべきことがまだ膨大にあることに苛立ちを覚える
闘病の日々」であろうと、その時々の心を技巧などこらさず平明に詠んでいるため、どの句
もすっと頭に入ってくる。

「きょうの一句」と称して日替わりに違う俳人の句が次々出てくるのは、よくあるのですが、本書はあの子規の句ばかりです。その日頃にふさわしい句が2万4千句の中から選ばれているので、その季節の匂い豊かないい句に満ち溢れています。さあ、皆さんなら、どの日のどの句から詠み始めますか。私は自分の誕生日の8月28日季語〈秋〉をまず開きました。

 氷噛ンデ毛穴ニ秋ヲ覚エタリ   1901(明治34)年

『仰臥漫録』明治34年9月9日「頭を扇がしむ 氷水に葡萄酒を飲む」との記述の後の一句。(中略)己を突き放したこの読みぶりは辞世糸瓜三句へと貫かれる姿勢でもある。

 このように一句についての真髄をついた論評が五行簡明に記されている。著者は元中学国語教師から俳人に転身した俳センスの持ち主。
 軽妙で飽きさせない解説文が多く、どこを紹介したらいいか困るほどであるが、選ばれた句の中で諧謔味の感じられるものを数句挙げるにとどめたい。子規は真面目な写生句ばかり作ったのではないということを付記しておきたい。
 2月9日  〈飯蛸〉 手にとれば飯蛸笑ふけしきあり  1895〈明治28〉年 
 3月16日 〈燕〉 燕(つばくら)の何聞くふりぞ電信機  1892(明治25)年 
 7月11日 〈茗荷の子〉 茗荷よりかしこさうなり茗荷の子  1892(明治25)年
 10月18日 〈栗〉 真心の虫食ひ栗をもらひけり  1902(明治34)年
   

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