現代うた景色-河野裕子の短歌案内 (中公文庫) の感想

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参照データ

タイトル現代うた景色-河野裕子の短歌案内 (中公文庫)
発売日2014-07-23
製作者河野 裕子
販売元中央公論新社
JANコード9784122059818
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 詩歌 » 詩論

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「ブラウスの中まで明かるき初夏の日にけぶれるごときわが乳房あり」といった瑞々しい短歌で知られる河野裕子が、歌人としても、選者としても、非凡であったことを、『現代うた景色』(河野裕子著、中公文庫)が示している。

62回に亘り、有名歌人から、雑誌、新聞の投稿歌人のものまで、河野が選んだ短歌が本書に収められている。

「階段を二段跳びして――青春」の項で挙げられている「ひかりごけのように漏れている図書館のあかりを見つめる君を見ている 岸本由紀」は、女子学生による現代の相聞歌といった味わいがある。

「男尊女卑に怒る太腿」の「リクルートスーツを脱げばあらはるる男尊女卑に怒るふともも 辰巳泰子」には、「このひとは、ふとももで怒っている。一番我慢がならないのが、男尊女卑でそれはこの世の不条理そのものだと怒っている。女に生まれただけで卑しめられるのなら、生まれたそのことさえも、呪ってやる、と啖呵を切るくらいの迫力だ」。「短歌」で「啖呵」というわけだ。「自活するためには、リクルートスーツを着て就職活動をしなければならない。職場を獲得する前段階から、こんなに男尊女卑を味わわなければならないのなら、実際に仕事を始めたらどんな目にあうだろう。そう思うと、辰巳はよけいに腹を立てる。辰巳のように、こんなに過激に怒りを表す人は多くはない」という言葉が添えられている。

「乳房の歌」では、「着古した君のTシャツわが着ればほのかに胸のふくらみ現わる 石井瑞穂」が選ばれている。「与謝野晶子や、阿木津英の乳房の歌を読んできた目で、『着古した・・・』を読み返してみると、何かとても自然な感じがする。石井瑞穂は、何かに反発するために、自分を主張するために歌っているのではない。恋人が着古したTシャツを着てみたら、ほのかな形に浮き出た自分の乳房に、ふと気づいたというのである。ことさらに女性という性を意識し、気負って表現しているのではない。Tシャツの歌の作者は、去年大学を卒業したばかり。まだ23歳である」。

「子供の無い夫婦は」では、「するすみの夫とわれに子のなくて人におよばぬしあわせがある

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