プーチンはアジアをめざす―激変する国際政治 (NHK出版新書 448) の感想

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タイトルプーチンはアジアをめざす―激変する国際政治 (NHK出版新書 448)
発売日販売日未定
製作者下斗米 伸夫
販売元NHK出版
JANコード9784140884485
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

中国が大国化した今、今後のアジア情勢の鍵を握るロシア。
ヨーロッパから極東アジアに跨る広大な国土こそ世界1位だが、人口は1億4千万で世界9位、GDPは世界8位に過ぎず、産業構造は大きく資源輸出に依存している。男性の平均寿命は60歳に満たず、富の集中はアメリカや中国を上回るほどであり、人口減少も特に極東で顕著だ。

そんなロシアのこれまでと現在が、本書で手軽に把握できる。
そして、今プーチンが考えていることは?
なぜロシアが日本の資源確保と安全保障にとっても大きな鍵なのか?
今、日本がなすべきことは?

アメリカのメディアの影響下にある日本のニュースを見ていても、多くの断片的な情報に翻弄され「分かったつもり」になれるだけで、肝腎のロシア人の考え方やそのバックボーンはまるで見えてこない。
プーチンはアメリカが言うような独裁者で「民主主義の敵」なのか?
「新冷戦」という表現は正しいのか?

1930年代に多くの東欧人がアメリカに移民した。彼らとその子孫は東欧ロビーとして今も民主党の政策に影響を与えている。このようなことも、本書で初めて知った。
細かい部分では著者の推測も多いが、俯瞰/長期的な見方かつロシアの本質に迫りたい方には、本書はとても有益だろう。
特に最後の第六章「変貌する国際政治地図」は内容も多岐にわたり、示唆するところ大。
簡単な説明ではあるが、CISの現在、ユーラシア連合設立の意図、上海協力機構とロシアの危惧、そして今期待される6カ国会議の意義なども明らかに。

著者は法政出身、本書の版元はNHKということで内容の偏向を心配したが、どうやら杞憂だったようだ。

(追記)

法政出身ではなく、現・法政の教授、東大法学部卒でした・・・

ロシア政治・事情に造詣の深い著者がウクライナ危機というロシアと国際社会の関係の一大局面の最中に著した大変興味深い、洞察に満ちた著書と言えると思います。著者のロシアの政治家や政治学者との深い関わり、バルダイ会議等日本人では通常多く関われない会合に参加して得られている知識などが、著者の推論の強力な補強材料となっているように思われます。ロシアのウクライナ危機への対応の背景にあるものや、ロシアが今後アジア太平洋地域とどのような関わりを持とうとしているかなどに、ご関心のある方には大変お薦めできると思います。

冷戦時、日本人の一番嫌いな国は、ソ連でした。そのソ連が崩壊、冷戦が終了し、世界はアメリカの一極支配になるかと思いましたが、アメリカは弱体化、中国が超大国化し、中東では「イスラム国」が台頭、ロシアは、再び大国化へと多極支配の構図になってきました。そして、日本人の一番嫌いな国は、アジアの隣人、中国になりました。

クリミア併合、混迷するウクライナ情勢、エネルギー大国化と、再び、ロシアを巡る情勢も、世界に影響を与えるようになってきました。

そんなロシアを巡る情勢と日本の採るべき道について、ロシア政治を専門とし、プーチン氏にも、実際、会ったことがある著者が書いた本になります。以下、重要ポイントを述べます。

〇シーチェンジの国際政治

・このシーチェンジが世界で起き、数百年ほど当然と思われていた主権国家体制そのものが問われているようだ
・オバマ政権が発足した2009年以降、アメリカは海外へのオーバーコミットメントはやめるという方針に転換した
・アメリカにとっての「新冷戦」とは、実際に戦火を交えないという消極的な意味合いが強い
・ヨーロッパには、経済面でロシアとの結びつきがある
・対ロ制裁がどこまで進み、いつ雪解けを迎えるのか。目下のところ、国際政治地図の変遷を読むカギはその点にありそうだ

〇ウクライナで何が起こっているのか

・ロシアは兄弟関係を強調する一方、ウクライナには、こうした「正教外交」に反発する人々も存在する。それが両国関係の現実であり、今回の危機の歴史的原因でもある
・対ロ制裁といっても、エネルギー不足のヨーロッパはそうはいかない

〇ロシア外交の核心

・冷戦が崩壊したことで、欧米との協調がロシア外交の主流になるかに思われた。しかし、いざ、欧米と接触して見れば、ロシアは否が応でも欧米との異質さを感じざるを得ない
・ロシアが親西欧志向外交を修正し、中国やインドを含めた全方位外交に転じたのは1996年のことである
・アメリカが対テロ戦争へ踏み切ったことを契機として、プーチンと欧米は接近する

2014年もクリミヤ編入ヤウクライナへの干渉等、相変わらずプーチン
外交の強引さが目立った。本書はこうした目下のロシア対外政の背景
にある歴史や政治・政策的意図に言及しながら、ロシア外交が目指す
方向性を分析する。

解説過程では、例えば、
・クリミヤ自体は元々ロシアの一部であり、ソ連時代に東ウクライナ出身の
 フルシチョフがウクライナに編入したこと、
・第二次大戦中は、西ウクライナ民族派がナチとともにユダヤ人虐待に
 協力した経緯等があり、そもそもウクライナには東西で歴史的対立構造が
 あること、
・目下のロシアは超大国復帰を目指すのではなく、多極化する世界を前提に
 アジア重視に対外政策の基軸を移そうとしていること、
・しかし、中国に対しては一辺倒の傾斜をするつもりはなく、政治的牽制を
 強く意識していること 等、
日常ニュース等では伝わらない情報・具体例を豊富に織り込みつつ、
一般的なステレオタイプの視点とは異なる深堀しした見方も提供される。

本書のロシア外交分析を通じて、外交政策という複雑で多面的な世界を
垣間見ることができた気もする。

時事問題への理解も深めることが出来る良書である。

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NHK出版から発売された下斗米 伸夫のプーチンはアジアをめざす―激変する国際政治 (NHK出版新書 448)(JAN:9784140884485)の感想と評価
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