セラピスト の感想
参照データ
タイトル | セラピスト |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 最相 葉月 |
販売元 | 新潮社 |
JANコード | 9784104598038 |
カテゴリ | ジャンル別 » 人文・思想 » 心理学 » 心理学入門 |
購入者の感想
本書の読者には、「著者がここまで自らをさらけ出して書いたことに感動した」という人もけっこう
多いのだろうとは思うが、私はタイトルにも記したように、ノンフィクションにしては著者の思い入れが
強過ぎることが裏目に出ているように感じたし、そこまでの感銘も受けなかった。
取材内容の取捨選択にもやや難があるというか、びっちり書き込まれている割に、構成にもうひとつ
一貫性が感じられず、著作としての焦点がどこかブレている印象があって、若干の読みにくさも感じた。
既に何人かのレビュアーが記しているように、河合隼雄や中井久夫が中心になって築いてきた
箱庭療法や風景構成法について、一ジャーナリストがあくまで外側から眺めた時にどう見えるか、
というのが本書のいちばんのキモであり、中井久夫との面談の記録もややミーハー的に興味深いのだが、
それらは必ずしも、日本における心理療法の歴史と現状を客観的に捉えることにはつながっていない
ように思えたし、もうひとつ核心に迫り切れないもどかしさも覚えた。
結果的に、著者の症状が告白されることでオチをつけた形になっているが、私がそのことをあまり
評価できないと考えるのは、ノンフィクションの枠をはみ出しているからというよりは、著作としての
インパクトの不足を、自身を語ることでカバーしようとしているように思えてならないからだ。
蛇足ながら、結末近くで河合俊雄が語る、「第二次産業化が、それに適応できない人たちを統合失調症
としてはじき出し、第三次産業化が発達障害を生み出した」(p.301)という指摘は、なかなか興味深かった。
多いのだろうとは思うが、私はタイトルにも記したように、ノンフィクションにしては著者の思い入れが
強過ぎることが裏目に出ているように感じたし、そこまでの感銘も受けなかった。
取材内容の取捨選択にもやや難があるというか、びっちり書き込まれている割に、構成にもうひとつ
一貫性が感じられず、著作としての焦点がどこかブレている印象があって、若干の読みにくさも感じた。
既に何人かのレビュアーが記しているように、河合隼雄や中井久夫が中心になって築いてきた
箱庭療法や風景構成法について、一ジャーナリストがあくまで外側から眺めた時にどう見えるか、
というのが本書のいちばんのキモであり、中井久夫との面談の記録もややミーハー的に興味深いのだが、
それらは必ずしも、日本における心理療法の歴史と現状を客観的に捉えることにはつながっていない
ように思えたし、もうひとつ核心に迫り切れないもどかしさも覚えた。
結果的に、著者の症状が告白されることでオチをつけた形になっているが、私がそのことをあまり
評価できないと考えるのは、ノンフィクションの枠をはみ出しているからというよりは、著作としての
インパクトの不足を、自身を語ることでカバーしようとしているように思えてならないからだ。
蛇足ながら、結末近くで河合俊雄が語る、「第二次産業化が、それに適応できない人たちを統合失調症
としてはじき出し、第三次産業化が発達障害を生み出した」(p.301)という指摘は、なかなか興味深かった。
「絶対音感」「青いバラ」「星新一」,さまざまな分野において読者に知的興奮を提供してきたノンフィクションライター最相葉月さんの7年ぶりの書下ろし新刊である。
著者が世界堂(画材店)へクレヨンを買いに行くところからスタートする。精神科医の中井久夫の「絵画療法」によるカウンセリングを受けるためである。中井の指示にしたがって著者は画用紙に絵を描きはじめる。ゆったりと流れる時間に身を任せながら、自分の心に浮かぶ風景を画用紙に描いていく。川、丘、家、緑…。これまで守秘義務により明らかにされなかったカウンセリングでのやりとりを著者がクライエント(相談者)となって公開する。それはクライエントの心の動きをイメージとして記録することである。
本書は、著者自身のカウンセリング体験を下敷きにして、二人の巨星、河合隼雄と中井久夫を軸に、日本のカウンセリングの歴史、カウンセリングの諸問題、戦後の治療の変遷を示しながらセラピスト(治療者)とは何かを探っていく。著者は、心療医療を学ぶために大学院へ半年、民間研修機関に4年間通い続けて臨床心理士の資格を取るほどの研鑽を重ねた。それだけ学んでようやく専門家に質問ができるレベルに立てたと著者は語る。加えて、著者は戦後の日本にカウンセリングを伝えた米国人へ問い合わせ、膨大な資料(巻末の参照リストに149点)を読み込み、多数の研究者に取材している。その上で”Doctor’s doctor”と呼ばれる久夫氏による「絵画療法」のカウンセリング体験の遂語録を記すのである。専門的に高度で難解なことを噛み砕いて立体的にわかりやすく説く筆力に驚いた。著者の積み重ねた努力と伝えようとする熱意には感嘆しかない。
サブタイトルに“Silence in
著者が世界堂(画材店)へクレヨンを買いに行くところからスタートする。精神科医の中井久夫の「絵画療法」によるカウンセリングを受けるためである。中井の指示にしたがって著者は画用紙に絵を描きはじめる。ゆったりと流れる時間に身を任せながら、自分の心に浮かぶ風景を画用紙に描いていく。川、丘、家、緑…。これまで守秘義務により明らかにされなかったカウンセリングでのやりとりを著者がクライエント(相談者)となって公開する。それはクライエントの心の動きをイメージとして記録することである。
本書は、著者自身のカウンセリング体験を下敷きにして、二人の巨星、河合隼雄と中井久夫を軸に、日本のカウンセリングの歴史、カウンセリングの諸問題、戦後の治療の変遷を示しながらセラピスト(治療者)とは何かを探っていく。著者は、心療医療を学ぶために大学院へ半年、民間研修機関に4年間通い続けて臨床心理士の資格を取るほどの研鑽を重ねた。それだけ学んでようやく専門家に質問ができるレベルに立てたと著者は語る。加えて、著者は戦後の日本にカウンセリングを伝えた米国人へ問い合わせ、膨大な資料(巻末の参照リストに149点)を読み込み、多数の研究者に取材している。その上で”Doctor’s doctor”と呼ばれる久夫氏による「絵画療法」のカウンセリング体験の遂語録を記すのである。専門的に高度で難解なことを噛み砕いて立体的にわかりやすく説く筆力に驚いた。著者の積み重ねた努力と伝えようとする熱意には感嘆しかない。
サブタイトルに“Silence in