加害者家族 (幻冬舎新書 す 4-2) の感想

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参照データ

タイトル加害者家族 (幻冬舎新書 す 4-2)
発売日販売日未定
製作者鈴木 伸元
販売元幻冬舎
JANコード9784344981942
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会学概論

購入者の感想

正義のための暴力には、快感が伴う。
かつてそのような話を聞いたことがある。だからこそ、戦争時などの非常時には、ヒトは凄惨な行動を取れてしまうのだと。本書が描き出すように、現代の日本社会には「自身の属する集団が悪と規定するもの」への過剰な暴力があふれている。

私自身は、幸いにもこれまでの人生で身内や親しい友人が加害者として後ろ指指されるような経験をしてきたわけではないが、本書に描かれるような、加害者家族の自宅、勤務先、友人関係までも洗いざらしにインターネット上で情報公開し、無関係の他人が加害者家族に対し、手紙、電話、自宅壁への落書きなどで誹謗中傷を行うという過剰な加害者家族叩きには寒気を覚える。
・自宅に送られる「早く死ね」「加害者家族も同じ目に遭うべし」といった内容の段ボール数箱分の手紙
・自宅の壁にスプレーで「人殺しの家」と落書きされる
・家族の勤務先に匿名の嫌がらせ電話が殺到する
・加害者の人物像を探るため加害者家族の周囲、友人を巻き込むマスコミ
・「加害者の娘をレイプするぞ」といった趣旨のインターネットの書き込み、またそれに続くつきまとい行為
・加害者児童の学校への「人殺しを育てた学校」との嫌がらせ電話、同じ学校に通う無関係の児童への嫌がらせ
・家族の児童に対する学校での誹謗中傷、学校側からの転校の勧め
・飲酒運転を起こした市役所職員の教育を問う、2000件以上の市役所への抗議

連続幼女殺害事件の加害者、宮﨑勉の周囲では、加害者の姉妹のうち一人は勤務先を退職し、婚約を解消。もう一人は看護学校を退職し、看護師への途をあきらめた。いとこの二人が公務員勤務していることが週刊誌で暴露され、退職に追い込まれた。叔父のうち2人も役員の座を退任し、別の一人は子供の姓を変えるため離婚した。そうしたことが続く中、加害者の父は自殺に至っている。他のケースでも、加害者家族が心中に追い込まれたケースは珍しくないという。

加害者の周囲の人間は、そこまで責めを負うべき存在なのか?
どれだけのケースで、「犯罪行為に手を染める自分の家族」を完全に止めることができるのだろう?

加害者の家族がどのような状況におかれているかを知る上で助けになる。日本社会が加害者家族とどう向き合っていけばよいのかは立場によって分かたれる難しい問題であり、勇気のある出版といえる。どの章をとっても興味深い。

第一章
 一つの加害者家族の妻に突然警察から電話がかかってきたところから始まる具体的なルポタージュだ。夫の逮捕、子供の転校、家族が苦しんでいるのを知らない夫、借金、空き家となって買手がつかない自宅、夫の父親の会社が倒産。東野圭吾の『手紙 (文春文庫)』に描かれている、強盗殺人を犯してしまった兄を持つ弟の悲劇のようではないか。

第二章と三章
 有名な事件の加害者家族の事例を幾つか綴られてある。加害者家族や被害者家族の手記が出版されており、真新しさは少なかった。
 興味深いのは、殺人事件の40%前後を占めるのは「家族内殺人」であり、日本の伝統的な殺人の形態となっている事実だ。冤罪でも築き上げてきた人生は崩壊する。冤罪や、直接関係ない人間を追い詰めるマスコミのいきすぎた報道はなんとかならないのかと思った。

第四章
 少年犯罪において、親の責任がどこまで関与しているのかを分析してあり興味深い。子を持つ親の方々が読めば、「兆候」があるならば必ず見抜き、未然に防げるのではないだろうか。
 被害者家族はもっと苦しんでいるというのに、日本の「和」を重んじる精神からさらに圧力を加えられている。日本社会では、「被害者の側にも落ち度があったからだ」と非難や偏見をもつのも伝統となっている。「和」を大切にする精神は日本の長所でもあるが、事件ともなると裏目に出て閉塞感を生む。

第五章
 加害者家族に対して他国での取り組みが紹介されてあるが、まだ日本は始まったばかりだ。何らかの支援が確立するまで気の遠くなるほどの時間がかかるだろう。

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