Cultures and Organizations: Software of the Mind, Third Edition の感想

全世界のIBM従業員を対象とした1970年代アンケート結果をもとに、統計的に強い相関関係の見られる切り口(次元)を使って国民性(文化)の違いを分析した先駆け的な研究(1991年初版)の2010年改定版です。国ごとの文化分析は、その他様々な要素を考えれば、国境がどれ程の意味を持つのかという点において安易なステレオタイプとの批判は免れませんが、本書の指摘する6つの次元（権力格差、個人主義、男性らしさ、不確実性回避、長期的視点、放縦）は国境の代わりに宗教や部族を媒体と捉えても、各々の文化分析に有効であろうことは想像に難くありません。自らの文化的バイアスをある程度客観的に把握することは、異文化との橋渡しに求められる仕組みや人材について考える際の一助となります。研究者だけでなく、国際化を図る企業の経営者、国際機関でのキャリアに興味のある学生にもお勧めできる実用的な内容もあります。外国との文化の違いは駐在経験者は肌で感じていることですが、本書のような形で客観的に見ることで新たに得ることも多いと思います。時間の無い方は第11章「異文化遭遇」を。文化的背景による日系企業の限界と競争優位、それを如何に事業戦略に取り込むかヒントが見えるかも知れません。個人的な疑問は、男性らしさが45歳でなくなるとすると、急速に高齢化が進む日本では女性らしさ化が進んでいるのか？？また、欧州で最も不確実性回避が高いのは、奇しくも財政再建に苦しむGreeceとPortugal。高い不確実性回避の文化は、リスク回避ではなく不安回避に傾き、例え合理的でなくても制度やルールの構築を進める傾向にある、とあります。それが故の破綻だとすれば、同じく不確実性回避の高い日本の将来は。。。0