ハーフ・ザ・スカイ――彼女たちが世界の希望に変わるまで の感想

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参照データ

タイトルハーフ・ザ・スカイ――彼女たちが世界の希望に変わるまで
発売日販売日未定
製作者ニコラス D クリストフ
販売元英治出版
JANコード9784862760869
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 女性学 » ジェンダー

購入者の感想

人身売買を始め、途上国の女性を取り巻く、女性であるが故の数々の過酷な現実を本書は克明に描いています。文字通り想像を絶するストーリーの連続を前に(また、随所随所に載せられている現地の生々しい写真も相俟って)、最早言葉に出来ない衝撃を受け、その余りの悲惨さから思わず途方に暮れてしまいます。しかし、本書はその絶望だけには終わりません。寧ろ、だからこそ、「生き生きした一〇代の少女を、売春宿の奴隷から、成功したビジネスウーマンに変える」女性のエンパワーメントが今何よりも求められていると言えます。勿論、その変化のうねりを引き起こすには、私達の出来る事は限られているものの、たとえそれがどんなに小さなインパクトでも、「歴史的運動の一翼を担うか、それとも、傍観者でいるか」がまさに一人一人に問われているのです。更には、解説の中で、ポラリスプロジェクト日本事務所の藤原さんが指摘されている通り、この女性への暴力を巡る問題は何も対岸の火事では済まされず、日本国内にもあちこちに巣食っている、ごく身近な問題としてもっと捉える必要があるはずです。本書が謳う、女性が輝くこれからの新たな時代への希望を願って止みません。最後に、このような良質な社会派の本を世に出されている英治出版さん、一読者として陰ながら応援しています。

 私はどこか人道支援やボランティアという言葉に胡散臭さ、偽善的な香りを感じていて、あまり好きではなかったのだが、この本を読んで、その考え方の誤りに気付いた。そういった類のものに、自分勝手に「胡散臭い」とラベルを貼るのは真摯な態度ではない。そうではなくて、一口に人道支援といっても、雲泥の差があり、その差こそに注目すべきだったと。「ソマリランドに産科病院を建てた女性」、「インドの下層カーストで虐待に負けずギャングに報復をする女性」、「マイクロクレジットの取組みをあくまでその地域の人々の主体性を通じて一歩一歩実現しようとしている女性」等など、この本に描かれた様々なヒロイン、ヒーローたちは、現実に格闘しながらも、着実に「本物」を追求していっている。

 本を読み始めると、まず、世界のどこかで起こっている理不尽な暴力に圧倒される。自分の無知やこの日本でのうのうと暮らしていることにある種の罪悪感を感じる。しかし、そこを気付かせることがこの本の狙いではないと思う。段々と読み進めていくうちに、先に書いた、「本物」を追求する人々の生きざまをひしひしと感じ、自らの生きざまに対する内省を促される。「本物を追求する人々」は本書の中で語られている人物だけではない。ほかならぬ、著者の徹底的にリアリティを追求する姿勢にも、その「本物感」が漂っているのだ。ひたすらに、その本物感を突き付けてくるがゆえに、最後のメッセージが響くのであろう。

 世界の現実を知りたい、というだけなら他の本でもいいかもしれない。そうでなく、現実と格闘し、本物を追求する人々を通じ、「自分は本当にこのままで良いのだろうか?」という問いかけを得るためには、この本はとても良い示唆を与えてくれる。

 どこかの偉い人が、以前自分が出した本と似たりよったりのコンテンツをちょっと体裁を変えて出版して印税ガッポリ稼いでいる一方で、こういう「自らの魂を削ってインクにして書いたような」本もあるのである。どうせ読むなら、こういう本を読みたいと思う。

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英治出版から発売されたニコラス D クリストフのハーフ・ザ・スカイ――彼女たちが世界の希望に変わるまで(JAN:9784862760869)の感想と評価
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