もういちど村上春樹にご用心 (文春文庫) の感想

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参照データ

タイトルもういちど村上春樹にご用心 (文春文庫)
発売日2014-12-04
製作者内田 樹
販売元文藝春秋
JANコード9784167902599
カテゴリ »  » ジャンル別 » ノンフィクション

購入者の感想

いきなり個人的エピソードで申し訳無いのだけれど、僕は40歳を過ぎてから「ある日突然」という感じで村上春樹にハマってしまった。なぜそんな事になったのか、自分でもさっぱり分からなかった。でも、読んでいて不思議と気持ちが落ち着くし、もともと文学を深読みしたり裏読みしたりすることが苦手だったので、「別に意味なんか正しく理解してなくてもいいや。なんだか分からないけど確かに何かが引っかかるんだし」と無理矢理自分を納得させていた。

似たようなモヤモヤ感を感じている村上春樹ファンの方(果たして他にもそんな不真面目なファンが居るのかどうかは疑問だけど)には、ぜひ読んでいただきたい一冊。内田さんの軽妙な語り口で、村上春樹が一貫して描こうとしている途方もないテーマが浮き彫りにされている。そして何よりも肝心なのは、村上春樹の描く世界が何故、貴方や私と繋がってしまうのか、そのヒントがいくつも散りばめられている。

 既刊の『村上春樹にご用心』『邪悪なものの鎮め方』と重複する文章も多い。良心的な著者は、まえがきできちんとそのことを断っている。それらの文章をあらかじめチェックして、飛ばし読みしようとしたが、気が付いたら最初から最後まで全部読んでしまう。やはり、内田センセイの文章は旨い。美味しい料理は、何度でも食べられる。
 そういえば、この本の中に「食欲をそそる批評」という一文がちゃんと入っていて、「ある書物の全体を<謎>を蔵したテクストであるとみなすような読み方」と定義している。村上春樹の小説は、読めば読むほどに謎が深まってくる仕掛けに満ちている。それを著者は様々な角度から、ひとりのファンという謙虚なスタンスで読み解いていく。
 司馬遼太郎や太宰治との比較は、目から鱗の鋭い分析だ。村上春樹が世界性を持つのはなぜかという深い問いがこの書物には伏流しているが、「父の不在」「欠如感」という指摘に肯かされる。「村上春樹の小説には激しく欠けているものがある」と早い時期に指摘していた文芸批評家の加藤典洋を、著者は高く評価しているが、謎に満ちた村上春樹の物語を深く楽しく味わうためにも、この二人の批評には目が離せない。
 食欲をそそる批評とは、「もう一度、作品を読み直してみよう」と思わせてくれる批評でもある。村上春樹の作品を読み返しながら、新作を待つことにしよう。

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