理不尽な進化: 遺伝子と運のあいだ の感想

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タイトル理不尽な進化: 遺伝子と運のあいだ
発売日販売日未定
製作者吉川 浩満
販売元朝日出版社
JANコード9784255008035
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 哲学・思想 » 自然哲学・宇宙論・時間論

購入者の感想

 本書は、進化論やその歴史をあまり(表層的にしか)知らない者にとって実に有益で、本書に出会えたことに感謝している。だが、読後にはやや疑問も残ったので、それを記してみたい。
 表題にある「理不尽」とは、第1章記載の生物種絶滅・3類型の1つ、「理不尽な絶滅」として登場する。これは、自然淘汰(選択)の「公正なゲーム」に敗れての絶滅と、隕石衝突、津波、火山噴火など大惨事(「弾幕の戦場」)での選択的ではない絶滅の2類型に対し、この惨事を何とか生き延びたものの、激変した環境下では適応できず結局絶滅した場合をいう。選択的な絶滅なのだが、通常の生息環境に働く選択ではない。これはラウプからの引用の言葉だが、彼が3類型に与えた「気の利いたネーミング」を、著者は本書を貫くキーワードに位置づけた。結果、「理不尽」は独特の重い意味を帯びる。著者は私たち素人がこの「理不尽さ」を見ないことにしている(理解できない)と言う。「運または遺伝子の支配に還元できない、両者が交錯する理不尽ささえ避けることができれば」なんでもいいのだと言う(p.85)。
 これは全く肯けない。今後温暖化により環境が激変すれば、かなりの生物種が適応できず絶滅するかもしれないこと(「理不尽な絶滅」類型だ)を、私たち素人はある程度理解している(だから話題に上る)。また、この「理不尽」が重い意味を持つと、「弾幕の戦場」での絶滅は理不尽ではないのか、という疑問だって生ずる。隕石の衝突で一瞬にして滅んだ生物種の絶滅は理不尽といえないだろうか? つまり、言葉が単なるネーミングではなくなるのだ。

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朝日出版社から発売された吉川 浩満の理不尽な進化: 遺伝子と運のあいだ(JAN:9784255008035)の感想と評価
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