三国志演義 (四) (講談社学術文庫) の感想

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タイトル三国志演義 (四) (講談社学術文庫)
発売日販売日未定
販売元講談社
JANコード9784062922609
カテゴリジャンル別 » 文学・評論 » 古典 » 中国の古典

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三国志演義の第4巻。カバー写真は葛飾北斎画の諸葛亮(MAK-Austrian Museum of Applied Arts/Contemporary Art.Photograph)。全120回のうち91-120回を収録。本書は西暦225年から280年の55年間だが、諸葛亮の死が234年で第104回(p329)なので、本巻の約半分にあたる部分は、10年弱の出来事に割かれ、残りの部分は、駆け足で、三国時代の終焉までを描く。後半で活躍するのは、魏の簒奪を狙う司馬師と司馬昭兄弟で、蜀では姜維。姜維の北伐の繰り返しの部分はやや冗漫だが、蜀と魏(トウ艾とうがい、鍾会しょうかい)の最終決戦は、展開が目まぐるしく、スピード感があり、読みごたえがある。呉の末路は最終回で描かれるが、晋の羊コ(ようこ)と呉の陸抗(りくこう、陸遜の子)のお互いをリスペクトする交流は、敵は勿論、味方同士の騙し合いが多い演義後半の中では、清涼剤となっている(羊陸之交、羊陸の交わり:いかなる政治的な先入観を帯びない私的な交誼を表す言葉)。曹操などの英雄に比べて、本巻の後半の登場人物は、やや小粒な感は否めない。本巻でも、登場人物が引用するのは、孫子、論語などが多く、歴史的人物としては、張良や韓信が尊敬を持って引かれている(韓信を描いた史記の淮陰侯列伝の引用も多いp211など)。巻頭に11ページの登場人物紹介があるが、末路まですべて書かれてあるので、これを読んでしまうと興味が削がれてしまうが、読後に辞書的に使用するには重宝。以下は金言。

司馬懿が諸葛亮に対して:将は良才に遭(あ)えば、敢えて驕(おご)らず(名将と渡り合えば、謙虚な気持ちがかんじん)p237

司馬懿(論語衛霊公篇を引用して):小を忍ばざれば、即ち大謀を乱るp294

死せる諸葛、能(よ)く生ける仲達を走らすp325

羊コ:天下のことは、いつも十のうち八か九は意のままにならないものだ。今、天が与えたものを取らないとは、なんと残念なことよ。p631

司馬炎:善良な人を推薦するのは立派なことだ。卿(きみ)は朝廷に人を推薦した後、どうして当人に知られないようにしたのか。

諸葛亮(孔明)は、先主劉備の負託に応えるため魏に侵攻します。しかし彼我の国力差はあまりにも大きい。天下三分して、魏はその8割を有している。蜀軍の数はせいぜい5万、これに対し魏は30万を動員できた。そのうえ、魏には機略に富む司馬懿(仲達)がいる。司馬懿は陣を堅く守り、素衣巾幗のあなどりに耐え、孔明の寿命の尽きるのを待ちました。

孔明は五丈原の陣中で病歿します。孔明の神算鬼謀をもってしても、北征はついに成功しませんでした。孔明の真価はむしろ政治家としての卓絶した力量にありました。度重なる北征で民の負担は重かったが、民に怨嗟の声はなかった。そして何よりも至誠尽忠の人でした。孔明が北征にあたり後主劉禅に奉った出師の表を読んで感動しない人はおそらくいないでしょう。

魏の功臣司馬懿は煮ても焼いても食えない男です。孔明亡き後、閑職に祭り上げられますが、呆けたふりをして周囲を油断させ、クーデターを起こして政敵を葬り、実権を握ります。司馬懿の野心は、孫の司馬炎が魏の帝位を簒奪したとき成就しました。司馬懿の伝記は正史魏書列伝には載っていない。正史には、司馬宣王として登場しますが、なにしろ天下を統一した晋王朝の始祖ですから、郭嘉や夏侯淵などと同列には扱えない。その伝記は晋書の宣帝紀を俟たねばなりません。

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