SAP 会社を、社会を、世界を変えるシンプル・イノベーター の感想

ERPの最大手ではありながら、日本の一般人にはその存在を詳しく知られていないSAPとSAPの戦略を知るには手頃な一冊である。

冒頭の2014年FIFAワールドカップにおけるドイツの優勝に貢献したサッカー分析ソフトを作ったこと、インダストリー4.0というドイツの国家戦略を支える中核企業であることは言うに及ばず、SAPの戦略によっては、世界の企業を変える可能性があるという意味では、アップルやグーグルと並ぶ存在感があると言っても過言ではないと思われる。

そのSAPの歴史、現在進行中のインメモリー革命、クラウド戦略、顧客・パートナーと一体となったエコシステム等、一般のビジネス・パーソンとして知っておいて損のない内容となっている。

SAPのしくみ、できること、画面など詳細を知りたかったのに、そんな図、画面など、どこにもない。
SAP歴史なんて知って何になるのか？
会社員は、どのように使えるのか？
我々会社員は、使うとどのような会社に効果があるのか知りたい。→この本には、ほとんど記載なし。
この本に書いてあるSAP歴史の評論なんて、会社員には、ほとんどいらない。
大手企業に実績があるか、書いてあればよい。全く実務的記載がなく、日経はダメ。

SAPの各ソリューションについてのメリットが淡々と記載されているが、どれもネット上で取得可能な内容で、独自の視点で深く切り込んだ内容を期待していたので残念。

まえがきで「非IT系の方むけ」を謳うだけあり、ビジネス書風の平易な文章で読みやすい。日経BP編ということで、日経ビジネスの読者を意識しているのかも。
SAP製品の説明など技術的な話はほとんどなく、ITがなぜ（ユーザー企業にとって）重要なのか？の気づきを与えることを主眼に置いている。
切り口も独特で、「ERPは企業の状況をコンピュータ内に忠実に再現したもの」とか「デジタルマーケティングの5原則」など斬新な視点を多く提供している。

正直、SAP＝ERPというイメージしかなかったが、それはすでに過去の話なのだということがよく分かった。
ちょっと分厚くて読むのに時間がかかったが、それだけの価値はある本です。