もっとよくわかる!免疫学 (実験医学別冊) の感想

私は医師でも医学部生でもありません。免疫に関係する難病を抱えた子供を持ち、主治医の先生から少しでも実のあるお話を伺いたく、日々免疫学の文献にあたっているごく普通の(でも、ちょっと科学好きの)一般人の親です。そんな私から見てこの本は今まで読んだ免疫学の文献の中で最も素晴らしいものの一つです。あらゆる情報を詰め込まないと「欠陥」の烙印を押されてしまう所謂「成書」の束縛から解き放たれ、本当に重要なポイントと流れを過不足なく正確に説明してくれています。私は漫画チックなイラストで説明している本は普段はあまり好きではないのですが、本書は例外です。河本先生が御自分で書かれたイラストは、ただの息抜きのイラストではなく事の本質をついた見事なものだと思います。免疫機構は非常に複雑で分かりにくいのですが、本質を簡潔に表現したイラストは理解をより早めてくれます。ごく一例ですが、p.61の自己反応性T細胞も副刺激やサイトカインの刺激がないとアナジーになってしまうイラストなどはイメージの醸成にとても役立ちました。私はよく知られている入門書である「休み時間の免疫学」、「好きになる免疫学」の後に読みましたが、じっくりと慎重に読み進むことができる方であれば、最初に本書を読んでも十分に理解でき、かつ本質を掴むことができると思います（もちろん、「休み時間」「好きになる」も素晴らしい本で、大好きです）。願わくばもう少しだけ価格が安ければとは思いますが、価格を補って余りある内容です。現在の免疫学のポイントを理解したいと思われている方に迷うことなくお奨めしたい一冊です。