後世への最大遺物・デンマルク国の話 (岩波文庫) の感想

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参照データ

タイトル後世への最大遺物・デンマルク国の話 (岩波文庫)
発売日販売日未定
製作者内村 鑑三
販売元岩波書店
JANコード9784003311943
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

購入者の感想

書の後半に収録された「デンマルク国の話」について。

きわめて短い講演録だ。
内村鑑三はこの薄い書を日清、日露の戦争の勝利に日本が沸いている時期に書いた。
デンマークが1864年の戦争に敗れプロシヤとオーストリアにシュレスイッヒ・ホルスタインの2州を割譲された後、ユグノー党出身のダルガスという男が、残されれた不毛の地といわれた領土に樅の木を植え国土を豊かにしていった偉業について触れている。
デンマークの成り立ちがそういうことであったかと思わせる点でも参考になったが、この書の凄みはむしろ後半にこそある。

内村はこう記す。

「・・・国は戦争に負けても滅びません。実に戦争に勝って滅びた国は歴史上けっして少なくないのであります。国の興亡は戦争の勝敗によりません、その民の平素の修養によります。善き宗教、善き道徳、善き精神ありて国は戦争に負けても衰えません。否、その正反対が事実であります。牢固たる精神ありて戦敗はかえって善き刺激となりて不幸の民を興します。デンマークは実にその善き実例であります。」

この文章は第2次大戦後の日本人が書いたものではない。
日清日露の勝利に躍り上がる日本にもこんな人間がいたのである。
勝っている時に負けたときのことを考え、負けたときに勝ったときのことを考える歴史観。
その慧眼の基本には明治人の傑出した教養があったと思う。

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