グラン・ブルー 完全版 -デジタル・レストア・バージョン- Blu-ray の感想

真の｢愛する｣とは欲して獲るモノではなく、与え捧げるモノと教えてくれる。
シチリアの陽気さが眩しければ眩しい程にストーリーは切なく、無色透明のごとき純粋な一人の男が深きブルーに抱かれる、究極の愛情の美しさを誇る、唯一無二の名作。
主人公ジャック･マイヨールにとっての深海やイルカ、束の間の恋人ジョアンナ･ベイカーにとってのジャック、友でありライバルのエンゾ･モリナーリにとっての勝利と母親、そしてリュック･ベッソン監督にとってのフリーダイビングを世に知らしめる本作が、それこそ海より深い愛情の対象物だ。
1988年の公開当時、フランスではハイティーンに熱狂的に支持され社会現象となったが、その純粋さに若者が惹かれたのは、何となく判る気がする。それぞれの譲れない想いに忠実に生きる登場人物達は自由で自然で本当に楽しそうだ。
地中海の白い港町と海原のブルーを鮮明に閉じ込め、珠玉のストーリーを余すところなく語り尽くしてくれる完全版Blu-rayは、私にとっては他に代わりのない宝箱だ。心の汚れを落としたいときに静かに独りで観たくなる、そんな往年の麗しき名作です。