One World の感想

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参照データ

タイトルOne World
発売日販売日未定
製作者喜多川 泰
販売元サンマーク出版
JANコード9784763134172
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » か行の著者

購入者の感想

「みんなが誰かを幸せにしているこの世界」
9人の日常が、かすかにつながる短篇集。
何気ない日常が、キラキラ輝いた瞬間に変わる。
パッと明かりが射したような晴れやかさにあふれる喜多川ワールド満載の本。

人生いつもうまく行くとは限らない。
どちらかと言うと、つまらない日常。
自分の才能や素質、生い立ちや境遇などなど、
不平不満をもらし、苦悩しながらの毎日だ。
そんな鬱憤も、この本を読むと晴れやかになる。

第7話「夢の国」で、中国から出稼ぎに来た張君が言う。
「大事にするから好きになる」
一見逆に思えるが、これこそが、日本人の美の感性。
家族や道具、学校や職場、そして、この国、日本。
ゴミを拾う、ただそれだけでも、勇気がいること。
そして、行動を起こすことで、晴れやかになれる。

第1話「ユニフォーム」での、小さくて非力な野球少年。
彼のそのファイトあふれる姿で、誰かの心を打つのだ。

各短編の登場人物は、けして、ヒーローやヒロインではない。
けれど、ささやかな存在の自分が、誰かを幸せにしているかも
しれないと思えるようになる。
つまらない日常が、輝いた日常に変わる。
些細な事で、人は勇気や希望をもらい、幸せになれるのだ。
喜多川ワールドに、またも、笑顔になれた。

本作品は9つの短編小説で作られています。まったく別の物語なので、別々に楽しむこともでき、読みやすいです。それこそ通勤中の電車の中や日常のちょっとした合間の時間に読んでいても忘れてしまうような難しさもないです。そして読書慣れしていない人が集中力を維持できる間に物語が完結するのではないでしょうか。なにしろひとつひとつの物語がコンパクトで良いです。
それぞれが次の短編と関連があるのですが、前の物語に出てきた人物の名前を見つけると妙な親近感を覚えます。ひとつの物語の主人公の生き方がほかの人の人生に影響を与えている、それが表現されています。そんな物語の連鎖でつながっていくこの長編小説、どう締めくくるのかと思ったらさすが喜多川作品でした。最後まで楽しませてくれますね。
もちろん今までの作品同様に多くの学びと勇気をもらえる作品ですが、小説としての面白さが作品ごとに磨かれていくのが嬉しいというか、著者の作品を読み重ねている者にとって別の意味でも勇気をもらいました。
内容については触れませんが、いろいろな人が気づきと感動、勇気、学びを得られると思います。誰にでもお勧めしたいです。短編小説の集まりなので読書に抵抗がある人にもオススメです。そして、個人的に好きなのはその読後感。読み終えた後の、心が洗われるような清々しさは代えがたいものがあります。

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