決戦!関ヶ原 の感想

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タイトル決戦!関ヶ原
発売日販売日未定
製作者葉室 麟
販売元講談社
JANコード9784062192514
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » 歴史・時代小説

購入者の感想

戦国ものの読み手であれば、ほとんどの人は司馬遼太郎の『関ヶ原』を読んでいるのではないだろうか。司馬遼の『関ヶ原』は時代考証にしても娯楽小説としても超一級の歴史小説である。油にのっている7名の作家が、巨人の完結させた「関ヶ原」という一大イベントをどう料理するのか非常に興味深かった。

本書では、『関ヶ原』で深く取り上げられなかった武将にスポットをあてている。本編に登場する織田有楽斎、小早川秀秋、宇喜多秀家は個性の強い偉大な親類の陰に隠れて大方がネガティブな評価がされている。しかし彼らに忠義、生き残りのための戦略、生き様がなかったのかというと決してそうではないことが本書を読むと少なからずわかる。

織田有楽斎は武将としては大きな手柄を取ったわけではないが、それを自覚しながら茶道に裏付けられたプライドを、一人称というハードボイルドの文法で描いているのは面白いアプローチだ。有楽斎へのイメージを変換させるという天野純希のたくらみは見事に成功している。小早川秀秋においてはこれまで優柔不断で凡庸な若者というイメージが定着しているが、そう見えるのは彼なりの生き残り戦略によるもだという解釈は新鮮で説得力があった。ある意味「関ヶ原の戦い」主役は秀秋なのではとも思ってしまう。宇喜多秀家も父親とは正反対の熱い忠義心と寝返りへの怒りもしかりである。

本コンピレーションは一見、司馬遼の『関ヶ原』の隙間を補完する組み立てになっているが、実は司馬遼が端折った武将の目から「関ヶ原」を語らせることにより、司馬史観に勝負を挑んだ意欲作群であるといえる。

今年は家康没後400年とのことで家康関連の新作が少なからず見受けられる。大谷吉継の生涯を描いた『白頭の人』もこの時期ぜひとも読んでもらいたい一冊だ。

歴史小説読みでこの本を読まない人は後悔すると先ず断言したい。
それほどに、高い出来のアンソロジーあるいは関ヶ原本と言いたい。
一気読みという言葉が好きでない私でも、味わいつつも、一旦読んでから読了まで本を置けなかった魅力がいっぱい。

関ヶ原本の難しさは、俯瞰すると各武将の魅力が薄れ、個々の武将に焦点を合わすと全体像が見えなくなる点。
それと、作家一人の世界観だと、どうしても東軍・西軍での色分けやキャラでの善悪が出てしまうのも難しいところ。
そこを本書は、アンソロジー&別々の武将ということで、この問題を大きくクリアしています。
そして、もう一つは、シバリョーという大きな壁の存在。私は、本書のタイトル「決戦!関ヶ原」の決戦!は、vsシバリョー「関ヶ原」と裏読みしています。

7人の現在最も油の乗った歴史作家のアンソロジーは、まさに各人の個性が見事に浮き立っていますが、共通のトーンを敢えて見出すなら「見えない部分を掘り下げることで、既成の人物像や史観を見事にひっくり返すこと」

徳川家康@伊東潤は関ヶ原の戦い全体像(要はシバリョーの世界)を見事にひっくり返し、小早川秀秋@沖方丁は愚将・卑怯者など罵詈雑言の代表だった秀秋に全く新しい息吹を吹き込んでいるところが、白眉。

その一方で、ただ一人、矢野隆は、ひたすらに漢・島津義久を真っ向勝負で描き抜いていますが、これが実に心を打ちます。他の作品が意外性や深い味わいとなっているので、フレンチでいえばグラニテ、和食で云えば箸休めのように、最後の2作を堪能する効果がありますが、そのパンチ力はダントツでした。漢かくあるべし。

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