東日本大震災 石巻災害医療の全記録―「最大被災地」を医療崩壊から救った医師の7カ月 (ブルーバックス) の感想
参照データ
タイトル | 東日本大震災 石巻災害医療の全記録―「最大被災地」を医療崩壊から救った医師の7カ月 (ブルーバックス) |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 石井 正 |
販売元 | 講談社 |
JANコード | 9784062577588 |
カテゴリ | ジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 災害 |
購入者の感想
専門は何であっても災害時には何かを実践しなければならない医師という職業。後世にこのような本を残していただいただけでまず感謝。各地域での災害医療体制の構築のためにも、医師の心構えのためにもお勧めです。
著者の石井正氏は、石巻赤十字病院の外科医であるが、今回の震災後の同病院での災害医療を全力で引っ張った人である。もちろん、そのような医療はひとりでできるわけではない。同病院のスタッフ、全国から集まった医療者たち、ボランティア、民間会社の人たち……そういう人たちがいかに有機的に協力し、協働し、被災地の人を死なせないで(手の届かなかった人ももちろんいたのだが)少しでも普通の生活になれるようにしたその偉大なプロセスの証言である。東日本大震災のあと、震災と原子力をテーマにした本は数えきれないほど出版され続けている。しかし、その中で読むべきものは少ない。震災に関する本で、3つだけあげるとすれば、開沼さんの「『フクシマ』論」、石橋さんの「原発震災」、石井正さんの「東日本大震災 石巻災害医療の全記録 」にとどめる。(吉岡斉氏の「原子力の社会史」は別としよう)。これらは読み継がれるべきだと思うし、実際読み継がれると思う。他はほぼくず(ほぼといれたところに逃げは打っているが)。いずれもある意味では専門書に近いということはいえる。開沼さんのは社会学による現状認識だし、「原発震災」は「地震学」「原子力工学」そして安全工学をふまえた議論だし、石井さんの本も、救急医療、あるいは地域医療の実態をしらないと読みにくいかもしれない。しかし、この3冊には、圧倒的な現場のデータが含まれ、それが語るストーリーは説得力あるものであり、歴史に残るものであると考える。石井さんには実際に2時間程度のじっくりしたインタビューをしたことがあるのだが、そこで語られたことがきっちりとこの本の中に入り、そのインタビューでははっきりつかめなかったいろいろな事実と教訓もおさめられている。日本ではこれから災害医療はこの本をモデルにして行われるだろう。さらに、日本全体で医療がどうあるべきかも、ここから汲み取れるものは多い。読んでほしい。