日本-喪失と再起の物語 黒船、敗戦、そして3・11(上) の感想

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タイトル日本-喪失と再起の物語 黒船、敗戦、そして3・11(上)
発売日2014-12-03
製作者デイヴィッド ピリング
販売元早川書房
JANコード登録されていません
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 外国のエッセー・随筆 » イギリス・アメリカ

購入者の感想

非常に評判が高いので、お盆休みに自分への知的投資として購入し、上下を一気に読了しました。 上巻の書き出しは、3.11後に見せた日本社会の強靭性から始まり興味をそそられますが、次第に、読むのが苦痛になってゆきます。 それは、明治以来の日本を西洋列国になろうとしてなれず第二次世界大戦という未曽有の惨事をアジアと自国民に課したという歴史観に貫かれているからです。 村上春樹、桐野夏生、飯島薫、さらにはイラクで人質となりながら生還した今井紀明氏のインタビューはさすがに一流経済紙の記者の取材として読ませす。 しかし、比較的リベラルな人物についての温かい記載に比して、意見の異なるインタビュー者へは極めて皮相というか意地悪な書き方です。安倍首相を含め、リベラルな意見と違う意見を言う人物は、登場の初めから「歴史修正主義者」(東條由布子)、「国家主義的で時に反動的な思想」(安倍首相)で始まります。 英国の知識人にありがちなアロガンスを感じました。 しかし、それでもこの本は広く読まれるべきと思います。 それは、日本の今を発言する人物のインタビューに成功し、課題として抽出しているからです。 それを普遍化できるかは疑問がありますが、1995年の阪神淡路大震災とオウムテロそして東日本大地震・津波・福島、そして中国の台頭が今日にの日本の今と近未来に大きな影響を与えているという漠然とた疑念が晴れたことは大きな収穫でした。 また、西欧の世論形成に影響力のある知識人の日本近代史観を知るうえでまたとない教科書でもありましょう。ただ、彼らが主導する国際世論に対して日本の姿を示そうとする努力が、一緒くたに「歴史修正主義」と断罪されるのでしょうか。最後までこの違和感が残り、新鮮な視点に触れた満足と限りない徒労感を感じた読書感となりました。 最後に幾つかの事実誤認あるいは、誤訳が気になります。 例えば、世界の100歳以上の高齢者数を6億7300万人(下巻p26)としていますが、それは世界人口の10%、日本の人口の5倍強となり、ありえない話です。 将来の版では再チェックをお願いしたいと思います。

本書は、2002年から6年8ヶ月間、フィナンシャルタイムズ(FT紙)の東京支局長をつとめ、また、東日本大震災の直後から幾度も来日して、被災地と日本の変化をフォローしてきた同紙アジア編集長の610頁に達する日本論である。
いかにもリベラルというか、
「日本は戦中のアジアでの残忍極まる行為を反省すらしないために、アジア中から嫌われ、アメリカとしか同盟できない孤立した国」であるといった趣旨を幾度も強調し、近隣諸国との摩擦の主因も日本にあるかと決めつけ、安倍総理を歴史修正主義者とし、日本の右傾化を嘆き、東日本大震災でも、自衛隊の活動には触れず、政府の無為無策を強調する。
「日本は、脱亜はしても、未だに入欧できない哀れな国」であるとの認識を示し、インタビューでも、著者の思想に反する登場人物については、雰囲気、ファッションから食事の作法まであげつらう。
しかし・・・
さすがフィナンシャルタイムスの記者であり、ワンパターンのネガティブキャンペーンではおわらず、ポジティブな面もとりあげ、
日本はお先真っ暗説が広まっているけれど、「お先真っ暗ではない」ことをアピールしている。
「日本は、世界最大の債権国だ。いろんな問題を抱えているけれど、欧米諸国よりましなことも多いし、ピンチになれば、すごいパワーを発揮する国だ。楽観できないけれど、悲観することもない」・・・というのである。
特筆すべきは、黒船来航(1853年)以来の日本の動向をトレースし、帝国主義の道を歩み、太平洋戦争に突入し、莫大な犠牲者をだしたことを、愚かなことと批判する一方で、欧米諸国にも原因があることや、東京大空襲の非道さ、東京裁判のでたらめなどもきちんと指摘していることである。
また、いくつかの大きなピンチを乗り切った事例と、それをリードした福澤諭吉をはじめとする数々の有為な人材の存在と活動も紹介している。
欧米でも人気がある村上春樹を幾度も登場させての社会論、茶道その他の文化と風習の紹介、国民性や歴史の認識が著者と対立する人物との討論、その他数多くのトピックスは勉強になり、東日本大震災での津波の後の被災者の描写には胸を打たれた。

上下巻の長い本ですが、読み出すと面白くて、一気に読めます。外部の視点から、日本の直近20年を眺められるのが何より新鮮です。日本史の記述に関しては一部「ちょっと…」と感じる部分もありますが、著者の日本理解は日本人読者の私にもほぼ同意できました。グサっと胸に突き刺さる所もあり、いまの自分の立ち位置を再確認する意味でもオススメの良書です。

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