魂の科学 の感想

　パタンジャリの《八段階から成るヨーガ修行法》の、第６･７･８段階（＝“ラージャ･ヨーガ”部門）を詳述した、本格的なガイドブックです。(ex：第１〜５段階までの“ハタ･ヨーガ”部門については、「実践･ヨーガ大全」または旧版の「実践･魂の科学」に解説されています。）
　
　人間の心身を『食物鞘･生気鞘･意思鞘･理智鞘･歓喜鞘』の五階層に分類し、その本質･機能･宗教的意義･霊視法･開発法などについて、微に入り細を穿った説明が加えられています。
　特に巻頭のカラー図版は珍しい資料で、人間の体内に秘められた霊的センターの実態が生々しく描かれており、非常に興味深い内容となっています。悟達したヨーギーのスピリチュアルな視覚世界をこれほど細かく示した図版は、和書ではほとんど類例を見ないのではないでしょうか。
　
　実質500ページを超えるボリュームなのに読み飽きることが無いのは、著者のスワミ・ヨーゲシヴァラナンダ師（＝20世紀後半のインド最高のラージャ・ヨーガ導師だそうで、ヒマラヤ山中で84年間修行を続け、1985年に99歳で没した模様です）の親しみやすい語り口と、訳者（＝著者の愛弟子でその法灯を受け継ぐ木村慧心氏）の適確な訳業の賜物であると思われます。（ただし、全ページを読破するにはかなりの精神的エネルギーが必要です。）　　　
　
　通常非公開と思われるヒマラヤヨーギーの修行課程を体系的に詳述し、後進ヨーギーの精進の便宜を図ろうとした熱意と慈愛に対し、謹んで☆５つを進呈します。