愚管抄 全現代語訳 (講談社学術文庫) の感想

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参照データ

タイトル愚管抄 全現代語訳 (講談社学術文庫)
発売日販売日未定
製作者慈円
販売元講談社
JANコード9784062921138
カテゴリ » ジャンル別 » 歴史・地理 » 日本史

購入者の感想

愚管抄を読む際、比較的入手し易いのが岩波文庫か、岩波旧大系本(大きい、重い)になるのですが、どちらにも注のみで現代語訳がない。ですので、これは実にありがたい。あの延々と続く皇帝年代記から訳してくださりあのあたりをサクサクと読み進め、それから慈円の思想に入れます。中世のみならず、それまでの平安後期辺りまでをも知る、考える際にも必携の書「愚管抄」。それがこのサイズで読めるのだから、よい時代になったものです。とはいえ、本格的に学ぶ方は疑いながら読むことをオススメします(研究上の態度として)。日本史を学ぶことの意義を考える、その意味でも、本当に心から刊行に感謝しています。16歳で「愚管抄を読みたい!」と思って以来、遅々として進まず、延々と続く皇帝年代記にしばしば心折れ中断したりしながらのおよそ四半世紀。文庫化に感謝せずにはいられません。関係各位の皆様ありがとうございました。

『愚管抄』は、鎌倉時代の史論です。しかも、ただの史論ではなく、著者である慈円その人の歴史観=「道理」に貫かれた、きわめて思索的、哲学的な書物でもあります。ただただ歴史上の人物や出来事を並べるのではなく、それらの人物・出来事が内包する本質は何か、それらの人物・出来事によって形作られた社会とは、政治とは、天皇家とは、摂関家とは、自分とは、歴史とは、いったい何なのか、というような思考を徹底的に客観視し、叙述しきったという意味で、史上希有な書物でしょう。

しかし、そんなややこしいことを書きつくした原文は、当然かも知れませんが、とにかく難解・晦渋で読みにくいのです(慈円本人は【この国に生まれた以上、せめてこれくらいは日本の風習が形づくられてきた有様や世の中が移り変わってきたそのあり方をわきまえ知っていなければ、この国の人としてふさわしくないと思うのである。(巻第二、本書112ページ)】なんて言っているけれど・・・)。専門の先生方ならともかく、僕は読んでいる途中で「ついていけない!」と投げ出してしまうようなことも、これまでしばしばありました。

ですから、本書のような、きわめて判りやすい現代語による「全訳」の公刊は、このうえなく大きな価値・意義をもつように思われます。しかも手に取りやすい文庫版。慈円研究・『愚管抄』研究の第一人者の数十年にわたる勉強の精髄を、ポケットに入れてどこにでも持ち運べるのです。すばらしい!また、大隅先生訳の『日本の名著 慈円・北畠親房』(1971年公刊)、『日本の名著9』(中公バックス版、1983年公刊)が両書とも絶版になっているので、この度の補筆・再刊は、なおのこと意義深いと思われます。

文中の固有名詞・用語で判りにくいものについては、その都度()で訳注が付され即刻理解できるような構成になっているので、いちいち脚注に立ち返らなくてもよく、たいへん便利です。それでもなお判りにくいものや、解説されるべき重要用語にかんしても、末尾に詳細な「補注」が付されていますので安心です。(ただ、何らかの形で「索引」があればさらに便利だったと思うので、「索引」が無いのは残念。)

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