東京 大人の居酒屋 の感想

各店の写真を見て、文章を読んで、巻末の地図と店の基本情報を眺め、店を想像すれば楽しい。満足の出来る大衆居酒屋のガイドブックだ。私は独りでじっくり自分の時間と空間を確保して呑む。すると次のように自ずと好みの居酒屋タイプが必要だ。店は小さくても大きくてもいいが、テーブルの大きさ・配置や、カウンター席の数・間隔という店の物理的な形が非常に重要な要素だ。お通しだけは選べないので安いに越したことはない。日本酒はreasonableな値段が欲しい。全国の有名銘柄を売りにしてもいいが、1合を高い価格で出されるのは真っ平御免だ。どんな酒でもうまい。それなら300ml瓶の普通の生酒があれば良い。つまみも肴も、大衆的値段で活きが良く旨いことが有難い。やけに凝った立派な日本料理は必要ない。簡単かつ単純な酒の肴で十分だ。日本酒やつまみ・肴もさることながら、一人酒を楽しむには、落ち着かぬ合い席だったり、隣とやけにくっつくカウンターだったり、すぐ隣のテーブルに大声張り上げる4人客がいては困るのだ。これらの多くの条件を全て満たしてくれそうな多くの店が本書には掲載されていた。見開き2頁だが、文章を読まずとも、店内の写真で座りたい場所がよくわかる。料理の写真でメニューの傾向がよくわかる。巻末の地図、営業時間や飲み物、食べ物の価格帯から店の印象全体がわかる。もう心はその店のカウンター席に着き注文済み気分だ。本書は東京に限定してはいるが、山手線の新宿、渋谷、東京、神田、上野等、そしてJR各線、私鉄、地下鉄等々へ広域拡大した全55店。いずれも一度は行ってみたい店ばかりだ。ただ私の行動範囲からすれば、更に東京を城北、城南、城東、城西的にエリア別に4分冊程度にして頂ければより有難い。