ホテル・ピーベリー (双葉文庫) の感想

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タイトルホテル・ピーベリー (双葉文庫)
発売日2014-11-13
製作者近藤 史恵
販売元双葉社
JANコード9784575517293
カテゴリ » ジャンル別 » 文学・評論 » ミステリー・サスペンス・ハードボイルド

購入者の感想

鮎川賞作家の近藤氏のハワイの日本人夫婦が経営する民宿を舞台にそこに滞在する人間達を描いたミステリー作品。
ミステリーと言っても本格路線ではなく、読んでいるとどこがミステリーなのか分からないまま展開していき、最後にどんでん返しが待っているというプロット型のサスペンスミステリーとなっている。
長編としては短い作品だが、ハワイのけだるい雰囲気と落ちがなかなか見事に融合している。

暗い傷心をかかえて学校教諭を退職した若い男性主人公が、長期滞在を計画してやってきたハワイのホテルで、思いがけない事件に巻き込まれるサスペンスミステリ。

常夏の島に佇立するホテルは、家庭的な民宿のような明るい空気の背後に、どこか冷えた闇の湿度がただよい、そこには、やはりどこか翳った裏の顔を秘めた登場人物たちが居をともにする。そんな明るい表の空気と秘められた裏の空気の温度差に、ミステリアスな香りを漂わせてみせながら読者の鼻先をどんどん誘い、巧みなツイストで表裏一体となった終幕へとあざやかに着地させる。その間、飽きる暇もなく一気読みさせてくれる作者の軽妙な筆致は見事。

ゴシック様式の豪邸での名探偵の大活躍や、驚天動地の犯罪トリックといった豪奢な晩餐はないが、あか抜けたカフェでいつもより少し贅沢な三時のお茶を楽しんだような気分にさせてくれる作品。ミステリを《論理》よりも《心理》で読みたい方、『わらの女』のカトリーヌ・アルレーや、『シンデレラの罠』のセバスチャン・ジャップリゾ、『悪魔のような女』のボアロー&ナルスジャックなどの、フランスのサスペンスミステリがお好みの方には楽しめる作品ではないかと思う。

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