現実を生きるサル 空想を語るヒト―人間と動物をへだてる、たった2つの違い の感想

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参照データ

タイトル現実を生きるサル 空想を語るヒト―人間と動物をへだてる、たった2つの違い
発売日販売日未定
製作者トーマス・ズデンドルフ
販売元白揚社
JANコード9784826901772
カテゴリジャンル別 » 科学・テクノロジー » 生物・バイオテクノロジー » サル・人類学

購入者の感想

本書の内容については、ほかの方がかなり詳細に紹介されていますので、私が本書を読む過程で、印象に残ったこと、感じたことを書いてみます。

まず、時間、とりわけ未来をどう考えるかがヒトの特性だとしていることが極めて面白いです。
将来に大きな報酬を得ることよりも、少なくても今すぐ得られる報酬をサルやヒトの幼児は選択してしまう。ところが、ヒトは成長するに従って、将来を強く意識しはじめます。極めて理解しやすい実例ですが、これは、おそらく、ヒトが年齢によって時間の「長さ」をどのように感じるかと関わっているのかもしれないとも考えられます。年齢を経るに従って、一年が短いと感じる人が増えるのと、微妙にリンクしている気がしてなりません。

さらに最終章のタイトル「どこに行くのか?」(クオ・ヴァディスというルビがふられています)。2年ほど前に邦訳されたエドワード・O・ウィルソンの『人類はどこから来て,どこへ行くのか』を思い出しました。この本は、ゴーガンの『われわれはどこから来たのか われわれは何者か われわれはどこへ行くのか』に触発されて考察されたことが書かれているのですが、ヒトとは何かという根源的な問題を探る本書と、どこかつながっている部分がある気がしてなりません。さらに、フランス・ド・ヴァールの『道徳性の起源:

 原書のタイトル(The Gap)にあるように、本書の主題は「ギャップ」である。ヒトとほかの動物とを隔てるもの、ヒトにあってほかの動物にないものとは何か。本書はこの大きな問題に、動物行動学、比較心理学、人類学などの知見を駆使しながら挑んでいく。
 ヒトと動物のギャップを説明するものとして、これまでさまざまな候補が提案されてきた。そして本書では、そのなかのとくに6つの候補について検討を加えている。すなわち、「言語」「心の時間旅行」「心の理論」「知能」「文化」「道徳性」がそれである。では、それらの特性は本当にうまくギャップを説明できるだろうか。
 著者のみるところ、じつはそれらの特性は、「あるかないか」と単純に言えるようなものではない。むしろ、さまざまな観察と実験が示しているとおり、事態はもっと複雑で微妙である。つまり、一方では、それらの特性の原初的な形態であれば、ほかの動物にも認めることができる。ただ他方で、それらの特性がこれほど柔軟かつ高度に発達しているのは、やはりヒトだけだと言わざるをえない。たとえば、ある程度のコミュニケーション能力は、大型類人猿やほかの動物にも認められる。しかし、再帰的な構造を持ち、限りない表現力を有するのは、やはりヒトの言語だけだ。そのように、ヒトにおいて注目すべきは、上記6つの特性があること自体ではなく、それらが柔軟かつ豊かな仕方であることなのである。
 それならば、そうした柔軟性や豊かさは、いったい何によって可能になっているのか。上記6つの特性を批判的に検討するなかで、著者はヒトに特有のふたつの特徴を浮かび上がらせている。そのふたつとは、すなわち、「入れ子構造のあるシナリオを構築する能力」と、「そのシナリオを他者と共有したいという衝動」である。結論を言えば、このふたつの基本的特徴こそが、ヒトに柔軟性や豊かさをもたらすものである。そしてそれゆえに、ヒトと動物のギャップを説明するのも、そのふたつの基本的特徴にほかならない、とそういうわけだ。

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