松田聖子と中森明菜 [増補版] 一九八〇年代の革命 (朝日文庫) の感想

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参照データ

タイトル松田聖子と中森明菜 [増補版] 一九八〇年代の革命 (朝日文庫)
発売日2014-12-05
製作者中川右介
販売元朝日新聞出版
JANコード9784022618146
カテゴリエンターテイメント » 音楽 » J-POP・日本の音楽 » 歌謡曲・演歌

購入者の感想

紛うことなき傑作である。読了してまず思うのは同じ著者による『大女優物語』(新潮新書、2010)との類似。オードリー、マリリン、そしてリズの同時代史という切り口に戦慄せざるをえなかったが、その前史としての2007年刊本書初期版(幻冬舎新書)の存在に今更ながら気づく。さらにまた心が飛ぶのは1968年初版、古本業界で高値を呼ぶ竹中労『タレント帝国』(現代書房)との類似。仮名ではなく実名でギャラを記載したことでナベプロが買い占めた同書だが、基本となったのは芸能界の歴史に向き合う真摯な態度である。その意味で本書との共通項を感じたのである。
この本は冒頭にこうある。「モーツァルトとベートーヴェンのことを書くように、あるいは平塚らいてうと伊藤野枝のことを書くように、松田聖子と中森明菜を書く」(5頁)。この姿勢は最終頁までゆらぐことはない。われらの同輩が山ほど手がけた(あるいはいまも手がけつつある)「タレント本」にしても歴史書、あるいは自伝のカノンと同様に丁寧に扱われる(引用されるエピソードとして出典を明示しつつ誤記も厳しく指弾されているが)。
1972年から89年まで、微細に対比列伝が展開されるが、ここで特筆すべきは二人以外の情況の記述である。とくに山口百恵がいかなる系譜で登場したか、ピンク・レディーがごく短い活躍期間で果たした役割、「ザ・ベストテン」がいかにエポックメーキングな存在であったか、文化人化して生き残った小泉今日子という無視できない存在へのリスペクト等々。漠然と説明するより、具体的に引いてみよう。
「七〇年代末になると、アイドルという制度はいきつくところまでいってしまった。山口百恵が進めた自らの実人生とアイドル像を限りなく一致させる方向と、その対極であるピンク・レディーが進めた徹底した虚構化である。そして、二つとも破綻してしまった。/そのアイドルの荒野に、時代遅れのフリルのついたドレスで武装した少女が挑もうとしていた。忘れていたものが蘇ったのだ」(88頁)

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