終わりと始まり の感想

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参照データ

タイトル終わりと始まり
発売日2013-07-05
製作者池澤夏樹
販売元朝日新聞出版
JANコード9784022510969
カテゴリ文学・評論 » エッセー・随筆 » 著者別 » あ行の著者

購入者の感想

本書は48編の随筆から成り,元は朝日新聞に月1回,連載されたコラムで,単行本化にあたって加筆されています.どの頁を繰っても池澤夏樹が現れて,吾らは彼の講釈を聴き,教えられ,気づかされ,納得します.叙述に論理があり,ユーモアもあります.しかも目線が弱者・被害者のそれです.著者には熱血が流れている.その熱血は知性で抑えられ,深化し,「非難するのは容易だが,非難してどうなるものでもあるまい」と書かせました.私は福島第一原発事故を論じて「幸福の島の未来」以上の文章を知りません.同様に,沖縄の米軍基地を取り上げて「沖縄,根拠なき負担」以上に考えさせられた文章も知りません.「東北の被災者」にも感動しました.その最後の一行は,「事態を正確に読んだ上で楽天的にふるまう.それは不運を乗り切る力の一つであるだろう.」です.厭世的な,悟ったような言説からは何も生まれない.社会は,社会を非難するだけではどうにもならないからです.打開の糸口を人それぞれに見いだしていく,私はそのことを本書から教わったような気がします.有り難う,池澤さん.

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