自分超え: 弱さを強さに変える の感想

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勿論松田丈志選手のことは以前から知っていましたが、ロンドン五輪前に放映されたドキュメント番組を見て、松田選手と、それを支える久世コーチの姿に興味を持ち、購入しました。

一通り読んでみると、お二人を評する際に良く言われる「反骨」「苦労人」という言葉は、正直あまり当てはまらないなと思いました。
無論松田選手にも久世コーチにも「恵まれた環境にいる選手に勝ちたいんだ」という気持ちがあって、事実そう発言していますが、それに固執している雰囲気はなく、「世界に勝ちたい」「金メダルを取りたい」ということをシンプルに追求している印象が強いです。まるで修行僧のようです。
この著書の中で顕著だったのですが、久世コーチは松田選手に対して師匠風を吹かせてはいませんし、松田選手は久世コーチに依存したり、それ故の子供っぽい反発をしている訳でもありません。お互いがお互いのことを理解し尊重しあっている関係が伺えます。
そしてお二人とも「勝つためにどうすればいいか」、それだけをシンプルに考えています。
スポーツ科学を専門的に学んでいる松田選手と、長年の競泳指導経験と培われた感覚を非常に大事にしている久世コーチ。
考え方も立場も違いますが、「勝ちたい」という目的を共有し、そのためにもう一方の意見にも聞く耳をちゃんと持っているのも二人に共通しています。
二人とも、自分を過信しないし、柔軟です。だからこそ師弟関係を20年以上続けて来られたのでしょう。
「師弟」といってもちょっと珍しい関係でもありますけども。

本自体、お二人の考えが対比できる作りになっていて大変読みやすいです。私自身、一晩で読破してしまいました。
水泳のみならず、人への関わり方、子育てなど、様々なことへの示唆が込められている、良著です。0