リスト:パガニーニ・エチュード(完全盤) の感想

脅威に満ちた6曲からなるパガニーニ大練習曲、そして演奏不可能と呼ばれたパガニーニ超絶技巧練習曲。これを見事に弾ききったのが彼である。私はすでにハワードのパガニーニ・エチュード完全版を聞いたことがあったので特別衝撃に駆られなかったが、初めて聞く人は、かつてない演奏難技巧の連続への驚きと、見事な再現演奏への賞賛に包まれるだろう。時折感心する程スゴいテクニックが随所に顕れる。例えば初稿の第6番の第9変奏の技巧の熟練ぶり、最後のアルペジオの豪放さ。第4曲の難しさも彼は回避を乗り越えて弾ききっている。彼の精を尽くし出した最高の一枚といえる。さらにこれらの難物を演奏会でも披露しているというのだから驚きだ。日本にこれほどの怪力を持つヴィルティオーソがいたことは、彼が演奏するこれらが十二分に証明している。