今こそルソーを読み直す 生活人新書 の感想

アマゾンで購入する

参照データ

タイトル今こそルソーを読み直す 生活人新書
発売日2013-08-20
製作者仲正 昌樹
販売元NHK出版
JANコード登録されていません
カテゴリ人文・思想 » 哲学・思想 » 西洋思想 » フランス・オランダ

購入者の感想

ルソーと言えば、『エミール』などで有名な思想家であるが、昨今は「一般意思」の議論が再燃し始めている。本書は政治思想史が専門の仲正昌樹によるルソーの入門書だ。

彼の紡いだ思想・哲学を、主著『人間不平等序説』から『社会契約論』への思想的変遷の整理、彼の政治哲学が直面した問題、さらに彼を批判したタルモン、アーレントらの議論などと対置させながら解説する。『集中講義!』シリーズなどでの思想の交通整理に部類の力を発揮する仲正だけあって、本書もきわめてわかりやすい。いつもは通称「パブロフのワン君」たちとのダイアローグが挿入されているが、今回はそれも取り除かれ文面もスッキリしている。「難しい話の流れになっているかもしれない」とあとがきにあるが、この手の本に興味のある読者なら「頑張れば読める」レベルに落ち着いているはずだ。

本書がルソーの解説に割くトピックは、主にその国民国家論のキー概念である「一般意思」と、自然/社会の対立の調停である。ルソーが説いた「一般意思」の、よく混同されがちな「全体主義」との差異を明確にしながら、同時にいかにそれが実現困難な「フィクション」かも考察していく。また、著者を魅了しているという自然/社会との間でのルソー独特の「ゆらぎ」も露わになっていく。こうしてみていくと、実はルソーは思っていたより「わかりにくい」人だったのだ。

約300年前を生きた思想家にもかかわらず、本書を読んでいるとあらためてルソーの思想が「現代的」であると痛感する。価値の多様化する現代社会では、一つの「法」の成立でも熾烈な対立が起こりうる。ネットで今話題沸騰中の“某法規制”も、「一般意思」の成立と、「透明なコミュニケーション」の困難さが如実にあらわれているように思えてならない。そうした問題を、法と自由、国家の根本にまで立ち返りに考えていくのに、ルソーを読み返すことはかけがえのない営為ではないだろうか。

あなたの感想と評価

コメント欄

関連商品の価格と中古

今こそルソーを読み直す 生活人新書

アマゾンで購入する
NHK出版から発売された仲正 昌樹の今こそルソーを読み直す 生活人新書(JAN:登録されていません)の感想と評価
2017 - copyright© みんこみゅ - アマゾン商品の感想と評価 all rights reserved.