行政法のまるごと講義生中継 第6版 (公務員試験 まるごと講義生中継シリーズ) の感想

当書は相対的に行政法の参考書の中では悪い本ではないのだが、
・より分かりやすくしようという構成/校正上の工夫が乏しく、
・改訂してもほぼ内容が変わっておらず、やる気が感じられない

という点があまりよろしくない。

しかし、過去問に取り組む前に、行政法の全体像をつかんでおきたい読者にとっては、
根気よく読めばそれなりに理解が短時間で進む意味で、相対的な良書ではあると言える。
改善の余地は大いにあることから☆は４つとした。

【第5版からの改訂内容】
第5版から改訂はほぼゼロといっても過言ではなかろう。
ページ数もページ構成も全く一緒。文体もほぼ一緒である。
従来から問題として指摘されていた索引も追加されていない。

ざっと読み通してみたところ改正点は、
p271において、住民の直接請求の要件緩和についての法改正を反映して、
200文字程度の修正が見られるが、それがおそらく唯一の改正点だろう。
それ以外は、誤字脱字の修正が若干なされている模様。

【分かりやすさ】
それなりに分かりやすく語ろうとはしているのだろうが、
若干の口語調になっているだけで、親切とはいいにくい文体である。

ところどころ、それまでの学習についての復習をごく簡単に混ぜるなどしているが、
前のページに戻って自分で確認しながら読む努力は必須だろう。

行政法の場合は、著者も述べているように、キーワードの定義をきっちりおさえていくことが大事だとは思うが、
なぜか当書には索引が一切ついていないため、定義の確認に手間取るのが難点だ。
索引をつけないのであれば、例えば欄外に定義を再掲するなどの工夫があっても良いと思うが、
そういった配慮もない点はいただけない。

【費用対効果】
過去問の前に、大きな枠組みを理解する上では悪くない本だろう。
上記のとおり、若干校正面に難があるため、
じっくり読み通すのには15時間程度を要した。