下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉 (講談社文庫) の感想

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参照データ

タイトル下流志向〈学ばない子どもたち 働かない若者たち〉 (講談社文庫)
発売日販売日未定
製作者内田 樹
販売元講談社
JANコード9784062763998
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 社会学 » 社会一般

購入者の感想

内田樹氏の著書は他のものもそうですが、基本的に明確な論拠なしに論理を展開させるので、
前提となる論拠に疑問を持つタイプの人には通読するのが苦痛かと思われます。
確かに、定性的な事象への分析論として読むならば、鋭い指摘も多いのですが、論理展開の雑さゆえに、説得力が今ひとつです。
著者の論理展開の背景を支える事実が基本的に本やテレビで受け取った情報で、自分で見聞した情報がない、もしくは、圧倒的に薄いというのが最大の問題だろうと感じます。
また、時折、挟まれる次のような論理が目につきます。

  多様性を敷衍すること自体が均質化につながる

  
この文章を読んで、なるほどその通りと思う方なら内田樹氏の本にはまる要素ありです。
その逆ならば、読まないことをおすすめします。苦痛でしかないです。

労働を経験する前に消費者としての経験を子供がつみ、教育に経済合理性イデオロギーが誤って導入された結果、現代の若者は勉強することの自分の苦労と教育サービスを商品の購入と同じ交換だと考えるようになってしまったと言う。その結果、自分が払うお金としての苦労は最小限に値切るのが当然で、しかも「それを勉強して何の役に立つのか説明してくれなければ、勉強しないよ(買わないよ)」というかつてはなかった新しい態度が生まれたのだと言う。
しかし、勉強をする以前に学問の価値を理解する、説明することは不可能だ。その結果、「自己責任」で判断して勉強することを拒む若者層が生まれ、90年代以降日本の若者の学力、知力は急速に低下していると説く。

著者の饒舌で、巧みな説明に思わず説得されそうになるが、実は検証可能な事実に基づいた論拠は示されていない。確かに世界学力テストの推移をみると、日本の子供はかつてのトップからじわりじわりと落ちてきている。上がっているのは、香港、台湾、韓国、シンガポールなどだ。
しかし、こうした国は日本と同様、あるいはそれ以上に、経済がクローバル化する中で、現代消費文化や市場を相手にした経済合理性イデオロギーの洗礼を受けている。従って、日本の若者、子供の相対的な学力低下を、経済合理性イデオロギーの教育への浸透や現代消費文化で説明するのは、明らかに無理がある。
教育のあり方については、納得できる重要なポイントも指摘されているのだが、結局は「経済合理性イデオロギー」を攻撃、批判したいという著者の我田引水論法が饒舌なレトリックで展開しているだけだ。

そういえば、私が高校生だった1970年代にも、若者論ではやった言葉が「三無主義」(無責任、無感動、無関心)だったなあ。

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