私が語りはじめた彼は (新潮文庫) の感想

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参照データ

タイトル私が語りはじめた彼は (新潮文庫)
発売日販売日未定
製作者三浦 しをん
販売元新潮社
JANコード9784101167558
カテゴリ文学・評論 » 文芸作品 » 日本文学 » ま行の著者

購入者の感想

ほぼ日刊イトイ新聞の中で名作【かもめ食堂】の監督荻上直子さんが奨めて居たので
興味を持ち手に取った一冊。心底驚いた!!。こんな小説の書き方もあるんだなぁ、と。

古代中国史の研究者村川教授=【彼】。欲望の赴くままに生きた【彼】の事が
6つの短編(ミステリあり、心理小説あり)の中で語られて行く。
過去から現在に至るまで【彼】と関わりのあった登場人物の間の愛憎が複雑に絡みあう。

が、結局の所。最後まで【彼】の輪郭はハッキリと語られ尽くす事はないまま。
読んでいて口に広がるのも苦味だったり、切なさを含んだ酸味だったりで、
決して口当たりが優しい訳ではない。にも関わらず実に病み付きになる文章だ。

読了直後感じたのは。敢えて読者が各自【彼】をイメージしやすいような
ヒントや隙を残したまま書き終えているのではないか、という事。
だとすれば、恐るべし三浦しをん!!。そう感じる程に一つ、一つの話が
素晴らしい完成度を持っている。

個人的には突然父親を喪失し混乱していた息子が、【彼】の新しい家庭を訪問した後、
父親と訣別し、再生していく様子が描かれている【予言】が強く印象に残った。
人が愛について思う時の気持ちの奥底を見詰め、的確な文章で書き記す事の出来る
三浦さんの眼力。実に凄まじい小説です。

「私は、彼の何を知っているというのか?彼は私に何を求めていたのだろう?大学教授・村川融をめぐる、女、男、妻、息子、娘−それぞれに闇をかかえた「私」は、何かを強く求め続けていた。だが、それは愛というようなものだったのか…。」という文庫裏の文章を読んで、川上弘美の『ニシノユキヒコの恋と冒険』をもっとドロドロしたようなものかなと思いながら読んでみたのだけど、ちょっと違った。というのも、この大学教授・村川を語る視点が、彼と直接関わった人の配偶者とか恋人とかいうように、ちょっとひねった設定になっているから。それがおもしろいといえばおもしろいけど、結局この大学教授がどういう人物だったのかと想像しながら読むと欲求不満に終わるだろう。ただ、この教授の行動が周辺の人々に確かに影響を与えたということはよくわかるし、そういう周辺の人々の人生を描いた一編一編はとてもおもしろい。しばし人間の孤独をかみしめつつ、胸を痛めたり、時にゾクっとなりながら、他人の背後には色んな人生が隠れているのだなぁと思わされる。
それにしても、こんな年齢(昭和51年生まれ)で、こんな小説を書けるなんて、すごい作家さんだなぁと素直に脱帽。すごいです。

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