カテリーナの旅支度 イタリア二十の追想 の感想
参照データ
タイトル | カテリーナの旅支度 イタリア二十の追想 |
発売日 | 販売日未定 |
製作者 | 内田 洋子 |
販売元 | 集英社 |
JANコード | 9784087715255 |
カテゴリ | 文学・評論 » エッセー・随筆 » 著者別 » あ行の著者 |
購入者の感想
イタリアの内田洋子さんから20のお話のプレゼント。エッセイなのですが、ひとつひとつがまるで短編小説のような完成度の高さです。
何と多彩な登場人物でしょう。お金持ちがいれば貧しい移民も、頑なな老人も、夢を追う若い男も、ストイックな若い女も登場する。ミラノ、ナポリ、ローマ、ヴェネツァ、トリノ、北部の山村…彼らの出身地もさまざま。短いページ数のなかにそれぞれの人生が立ち上がってきます。この幅広い顔ぶれは作者の交友の広さ、つまり器量の大きさがもたらしたのでしょう。
ここで語られるのは、寂しい老人の話であり、何かを得て何かを失った話であり、心の空白を埋める作業だったり、天職に打ち込む姿であったり、深刻な家庭崩壊です。作者の透徹した目が市井に生きる人々の機微をとらえ生き生きと描写します。ハッピーエンドは少なくて、何かしら気がかりな、悲しく辛い話が多いのですが、どの人物にも作者のあたたかい視線が注がれます。舌を巻くほどの達意の文章。作者の柔らかな語り口に人々の息遣いやイタリアの町の風情が身近に感じられました。さすがに2011年の日本エッセスト・クラブ賞を受賞された才能です。
ひとつひとつのエッセイを慈しむように私は読み進めましたが、須賀敦子さんを思い出さずにはおれませんでした。「ミラノ霧の風景」「ヴェネツィアの宿」等々の知的で情感豊かな彼女のイタリア便りに深く心を捉えられたのは随分前のことでした。須賀さんが亡くなられたと知った時の喪失感が胸をよぎりました。それだけに内田さんの文章に須賀敦子さんと同様の理知的な暖かさを見出して、懐かしく、そして、うれしくなりました。
何と多彩な登場人物でしょう。お金持ちがいれば貧しい移民も、頑なな老人も、夢を追う若い男も、ストイックな若い女も登場する。ミラノ、ナポリ、ローマ、ヴェネツァ、トリノ、北部の山村…彼らの出身地もさまざま。短いページ数のなかにそれぞれの人生が立ち上がってきます。この幅広い顔ぶれは作者の交友の広さ、つまり器量の大きさがもたらしたのでしょう。
ここで語られるのは、寂しい老人の話であり、何かを得て何かを失った話であり、心の空白を埋める作業だったり、天職に打ち込む姿であったり、深刻な家庭崩壊です。作者の透徹した目が市井に生きる人々の機微をとらえ生き生きと描写します。ハッピーエンドは少なくて、何かしら気がかりな、悲しく辛い話が多いのですが、どの人物にも作者のあたたかい視線が注がれます。舌を巻くほどの達意の文章。作者の柔らかな語り口に人々の息遣いやイタリアの町の風情が身近に感じられました。さすがに2011年の日本エッセスト・クラブ賞を受賞された才能です。
ひとつひとつのエッセイを慈しむように私は読み進めましたが、須賀敦子さんを思い出さずにはおれませんでした。「ミラノ霧の風景」「ヴェネツィアの宿」等々の知的で情感豊かな彼女のイタリア便りに深く心を捉えられたのは随分前のことでした。須賀さんが亡くなられたと知った時の喪失感が胸をよぎりました。それだけに内田さんの文章に須賀敦子さんと同様の理知的な暖かさを見出して、懐かしく、そして、うれしくなりました。