贈与論 他二篇 (岩波文庫) の感想

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タイトル贈与論 他二篇 (岩波文庫)
発売日販売日未定
製作者マルセル・モース
販売元岩波書店
JANコード9784003422816
カテゴリジャンル別 » 人文・思想 » 文化人類学・民俗学 » 文化人類学一般

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本書は、ポリネシア、メラネシア、そしてアメリカ北西部のアルカイックな部族たちによって実践されてきた、ポトラッチと呼ばれる贈与と返礼の習俗に着目し、それが人間関係、そして社会そのものを形成する重要な役割を持つことを明らかにしている。
そのうえで、古代ローマやインドやゲルマンの文献にあたることで、類似の習俗がこれらの文化においても存在していたことが示される。
言ってみれば、ポトラッチは、人類共通の遺産なのだ。
最終章では、ポトラッチの視点から現代社会の問題が明らかにされている。

ポトラッチの特徴は、持てる者には贈与の義務があり、それを受け取った者には返礼の義務があるということだ。その際、返礼は、受け取った物を上回らなければならない。いわば、倍返しの世界なのだ。ここにはある種の競合関係があり、しかるべき返礼をできない者は、名誉や地位を失いかねない。この背景にあるのは、贈与される物には「物の力」があるという信念だ。物は生き物であり、それを一方的に自分のもとに貯め込むことは所有者を害することになる。Giftという言葉が英語では「贈り物」、ドイツ語では「毒」を意味するのは偶然ではない。

この種の信念は、現代人から見ると途方もない浪費に思われるかもしれない。
低コストで高収入を得ることが賢いとみなされ、消費は自分や家族のためだけにするのが現代社会の風潮だからだ。
しかし、著者自身が最終章で述べているように、「公の場で物を与える喜び、美的なものへ気前よく出資する喜び、客人を歓待し、私的・公的な祭宴を催す喜び」といったものは、いまこそ再評価すべきではなかろうか。
わが国の吝嗇文化に対する興味深い処方箋である。

最後に、本書は「解説」も含むと500字近いが、そのかなりの部分は註である。また、註以外にも補足説明も多い。それらはもちろん学術的に重要で、一般読者にとっても興味深い指摘も含んでいるが、さしあたって註や補足説明抜きに本文だけを読むことを薦めたい。

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