ガウディの伝言 (光文社新書) の感想

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タイトルガウディの伝言 (光文社新書)
発売日販売日未定
製作者外尾 悦郎
販売元光文社
JANコード9784334033644
カテゴリ »  » ジャンル別 » 文学・評論

購入者の感想

 スペインはバルセロナにあるアントニオ・ガウディ最大最後の建築物サグラダ・ファミリアで、主任彫刻家をしておられる外尾氏によるガウディ建築の入門書。
 
目次は、

 1.ガウディと職人たちとの対話、2.石に込められた知恵、3.天国に引っ張られている聖堂、4.人間は何も創造しない、5.ガウディの遺言−「ロザリオの間」を彫る、6.言の葉が伝えるもの−「石の聖書」を読む、7.ガウディを生んだ地中海、8.ライバルとパトロン、9.ガウディと共に育つ森−19世紀末のバルセロナ、10.神に仕える建築家の誕生、11.孤独の塔・サグラダ・ファミリア、12.永遠に満たされていくもの
  
となっています。

 ガウディの生涯をたどりつつ、ミロやピカソ、ダリら同じくスペイン生まれの芸術家たちのガウディ観などを紹介しながら、カタルーニャの自然と密接に結びついた彼の建築の秘密、また天才の仕事を継ぐ人間としてぶつかる問題やそれに対する真摯な取り組みなどを、現場の彫刻家ならではの視点で解説してくれています。
 「ガウディは自然を師とした天才建築家である」とよく言われますが、具体的に何をどのように自然から学んだのか、その学びをどのような形で建築に活かしていたのか、ガウディの天才とは何を指すのか、という点を見事に明かしてくれているのが本書最大の魅力かと思います。

 イタリアの巨匠ミケランジェロは信仰心の厚い人間であり「金儲けのために芸術に携わるような人間はろくなものをつくれない」と言い、フランスの天才彫刻家ロダンは「私にとって、芸術と自然と宗教は一つのものです」と言いましたが、スペインの異才ガウディもまた「すべての芸術は神に向かって造られなくてはならない」と考えていたことは、注目に値する事実だと思います。外尾氏自身もスペインでカトリックに帰依したそうです。しかも彼らは皆経済的に余裕があった訳ではなく、晩年は安定を得たとはいえ若い頃から長い間お金で苦労した人たちなのです。

 このような芸術家たちの清い信念−彼らに欠点がないとは言いませんが−を「変わり者」「旧時代の思想」と冷笑する向きもあるようですが、私は、今の私たちが学ぶべき態度がここにこそあると思います。

ガウディの建築は一見奇抜な造形で目をひきますが、この本を読むと、じつは深い思索と信仰の賜物であることがよくわかります。建築とは単に便利で効率がいいだけでは不十分であり、人間性と深くかかわり人間性を育てるものでもあることを教えています。機能や構造を満たすだけでは単なる建物であり、人間の意識や精神を高めることすら可能にするのが本当の建築なのですね。

このところ、建築関係の本が新書に進出しているのが目立ちます。なかでも本書『ガウディの伝言』と武澤秀一『法隆寺の謎を解く』(ちくま新書)が建築の本当の価値を伝えて出色。いずれも机上の論ではなく、彫刻家、建築家としての体験に根ざした、これまでにない視点があります。出版の意味もまたそこにあるのだと思います。

サグラダ・ファミリアを最初に見たのは、バルセロナオリンピックの前。らせん階段で塔の上まで登ったが、真ん中が吹き抜けで怖かった記憶がある。それは、塔が楽器の一部であるからだとこの本で初めて知った。
他にも、サグラダ・ファミリア自身が楽器であること、それぞれの塔の意味など記載されており、読んでいて楽しかった。
また、カタルニャの職人気質が今も続く建築の推進力になっており、この名建築のすごさがよく判った。
ガウディの天才的なひらめきは、建築物の部品ひとつに意味があり、むだのないことが理解でき、あらためてサグラダ・ファミリア、そしてガウディのすばらしさを実感できた。0

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