不可触民と現代インド (光文社新書) の感想

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タイトル不可触民と現代インド (光文社新書)
発売日販売日未定
製作者山際 素男
販売元光文社
JANコード9784334032234
カテゴリジャンル別 » 社会・政治 » 政治 » 政治入門

購入者の感想

インドには不可触民と呼ばれる人間扱いされない人間の層がある。その比率は全人口の85%に及ぶ。
近年はIT革命や世界のバックオフィスなどと注目されるインドであるが、その社会を知るにはヒンドゥー教とカースト制度、そしてカースト制度により抑圧される大多数の不可触民の実態を知ることは必須である。
30年以上インドを活動の場としてる著者が社会で活躍する様々なタイプの不可触民のリーダー格の人々への取材を通して、不可触民の現状を描こうとしたものである。不可触民もインド独立後は学校や公務員の指定枠を使い次第に活躍の場を広げてきた現状を表現するには最適の題材であろう。ひたすら煮抑圧されているだけの古いイメージの不可触民でなく、自分たちで世界を切り拓く新しい不可触民の姿を描くことを主眼としているため、不可触民の抑圧の現状は後景に退いてしまった感がある。それでも不可触民たちが様々な社会制度を利用しながら少しずつ活躍の場を広げてきた過程を紹介する作業は現代人類社会において大きな意義を有することには変わりない。
インタビューを主体としているため著述に散漫な印象も否めない。話が暗黙の了解で進んでいる部分が多く、読み解くのに苦労する箇所もいくらかあった。さらにそれぞれの章ごとに違ったタイプの不可触民を取り上げているため、全体としての統一感が今ひとつ感じられないなど構成・編集上の課題が多く見受けられる。

インドの暗部=ダリッド・不可触民達との対話を主軸に置いている書。

内容は、ほとんどが現代インドで活躍している不可触民・ダリッドとの対話。
統計らしい統計も存在しないシュードラ階級やその下に置かれる「人間以下の人間」の
扱いを受けあえぎつつ暮らす不可触民・ダリッド。その割合が80%を超えるとは…
いくつかの資料を漁ったが、これほど「政府の統計」が恣意的に行われていなかったことを
本書で初めて知った。「盗賊」としてしか生きていけない不可触民。批判するのは簡単だが、
それ以外の生きていく道が存在しない場合、犯罪を非難できても、犯人をどこまで責めることができるのか。
あまりにも悲惨な現実を当事者(不可触民)から突きつけられて、言葉も出なかった。
著者が特定の政治党派を支持することなく、いくつもの解放団体を現地取材し、論じていること。
かような本は、おそらくは著者にしか書き得ない。
カースト制度についてはかなりの書籍があるが、いざ「現在のインド・不可触民」については、
著者のように数多くのフィールドワークをこなし、不可触民解放運動の指導者層との会話を行った人は、
著者以外には知らない。

また、アンベードカルの存在がいまでも輝いていることは思いもかけぬことであった。
ヒンドゥーを捨てたアンベードカルの存在・思想が脈々と受け継がれているのに感動する。

インドには2回行ったが、もう二度と行くまいと思っていた。
2回目のインド旅行(個人旅行)の際、どうしてもタクシーを借り切らないと行くことができない
仏教遺跡があり、地元の旅行代理店に駆け込んだ。そこで「インドという国の矛盾」を感じたのが原因。
ドライバーとの片言の話。「インドにはカーストによる差別はありますか?」「ありません」
「憲法で禁止されているから差別はありません。」「違うカーストの人と結婚できますか?」
「もちろんできます。」「ただ…他のカーストの人と結婚すると家族や親戚との仲が…」

同じ著者の「不可触民」(知恵の森文庫)は衝撃的だったが、既に二十年前の本だから、その後を知るためにはいいが、単独で読むには、ちと苦しい。ちゃんと編集していれば除かれるような重複が多すぎるし、だらだらと関係者のコメントが続いたり、書物として粗製濫造の気味がある。なにせマスコミは「今年の新刊から」などと言うから、「不可触民」の代わりに挙げたりもするが、どうもこの新書濫造時代を象徴するような本になってしまっている。本作りというものは、もっと丁寧にやってほしい。小谷野敦

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